トラックはなぜSAに長時間停まっているのか?

SAのトラックは「強制的」に休憩させられている


私たちの生活を支える物流の世界。

ネットで頼んだ品がすぐ届くのは、昼夜問わずたくさんのトラックが荷物を運んでいるからです。


どうしても長時間勤務になってしまいがちな仕事。

そんなトラックのドライバーさんの労働環境を守るため、いくつかの規則が決められているのはご存じでしょうか。

働きすぎて疲れて、それが原因で交通事故になってしまったら大変。ということで、どのくらい働いたらどのくらいと休みなさい!ということが規則によって決められているのです。

ただ、この規則によって余計にドライバーさんが家に帰れなくなっている!という困った事例も発生しているらしいです。

この規則の内容を知るとSAで寝ているドライバーさんたちはサボっているのではなく、半ば強制的に休憩させられていることがわかると思います。

https://mousedrivelab.com/archives/2236

①長時間運転はダメ

一つ目に紹介するのは「長時間の連続ぶっ通し運転をしてはいけません」という規則です。


休むことなく何時間も運転するのは疲れます。

集中力は低下しますし、眠くもなってきます。

もし前の車に突っ込んだら大事故になってしまいます。そうならないための規則です。

どのくらい連続ぶっ通しで運転してはいけないのかというと、この規則できめられているのは「4時間」です。

いくら運転が好きだからといってもさすがに4時間連続ドライブしたら相当疲れると思うのですが、トラックドライバーさんたちはこのくらい休まず運転する方も多いようで、さすがプロですよね。


この規則では4時間の連続運転となる前に、必ず休憩などの時間をとらなければならないと決められています。

そして休憩などの時間は「30分以上」確保することになっています。

ギリギリ連続3時間59分運転して、SAで一瞬休んでまた運転再開というのはダメ。自分では「いける!」と思ってもそこから30分間は1ミリも車を動かせないのです。

「ちょっと車を移動してください」なんていわれたら最悪です。

この規則のため、目的地まで4時間かかるかどうかによって、運行がガラッと変わります。

目的地まで3時間45分なら一発で行けます。荷物を下ろすのに40分、その間運転はしていないのでここで連続運転がリセット、帰りも一発で帰ることができます。出発から荷物を下ろして帰るまでにかかる時間は8時間10分。無駄のない、最適な運行です。

片道4時間5分かかると行きと帰りに30分ずつの休憩などをとらなければなりません。先ほどの最適な運行と距離などたいして変わらないのに、出発から到着までの時間は9時間50分とだいぶ仕事の時間がふえていることになります。

連続4時間なんてちょっとくらい超えて運転してもいいから、無駄な休憩なんてナシにして、その分早く家に帰って休んだほうがよっぽどいいと私は思うのですがどうなのでしょうか・・・。

このありがたい?規則のため、片道4時間を超える場所に行くときは、ドライバーさんが家に帰る時間は移動時間プラス1時間確実に遅くなります。

でも規則ですからね。

②一般的に言う「お昼休み」もとらなければならない

ふたつ目の規則です。

これはすべての働く方に当てはまるのですが、一日8時間以上働くときは60分以上の休憩をとらなければなりませんというものです。
昼休みってありますよね。皆さんランチをしたり昼寝していますが、あれは12時ごろにご飯を食べないと食事のバランスが悪いから・・ではなく、この規則によって休むように決められているからです。

別に何時でも休めばいいのです。これはトラックドライバーさんも同じです。
そしてこの規則によってもドライバーさんが家に帰る時間が遅くなることがあるのです。


先ほど紹介しました、無駄のない最適な運行片道3時間45分の旅。

仕事の始まりから終わりまでは8時間10分とスマートなのですが、冷静に見てみると運転して荷物をおろしてまた運転してと、この間60分の休憩をとっていないですよね。

「いやいや高速の運転なんて休んでいるようなもんで俺は疲れてないから今日は休憩ナシで早く帰るよ!」というのは規則違反ということになります。

「最適な運行!」と思っていたのに残念です。

こんな場合、事業所に帰ってから60分間休憩し、それから帰宅すれば規則的にはOKです。でも仕事の最後に休憩っておかしな話ですよね。

1時間の休憩をとると、この日の勤務時間は9時間10分。どんなに道が空いていてスムーズに仕事が進んでも、仕事をさっさと終わらせることはできなそうです。

正直形式的な休憩なんていらないから早く帰りたいというのがドライバーさんの本音なのでしょう。

事業所に帰ってボケっとしているならSAで寝ていたほうがマシですよね。

実際、荷物を扱う時間や待機時間を休憩時間に充てているドライバーさんも多いようです。

仕事をしている時間を「休憩」にしている現状があるということです。

③仕事のタイムリミット「15時間」を過ぎると「帰れなくなる?」

最後にもう一つの規則を。

トラックのドライバーさんが一日に仕事をすることができる時間は決まっています。それは最大15時間。そして「運行と運行の間には9時間以上の休息を入れなければならない」ということも決まっています。(2024)

しかしまたまたこの規則が仇になる事例が起こります。

「トラックの仕事は長時間になるよね。だからしょうがないよね」と思いますが、それでもなかなかの長時間です。

画像は2023年のもの。2024年以降は一日の仕事の時間は最大15時間、運行と運行の間に9時間以上の休息を挟むことになっています。

高速道路が渋滞。何とか事業所の近くのSAまで帰ってきました。始業からすでに14時間50分が経過。このまま運転したら絶対に15時間を超えてしまいます。困ったな。
しょうがないから、事業所に連絡してそのSAでいったん業務を終了することにしました。15時間を超えて働いていないので、規則には違反していませんね。ただこの後、業務と業務の間には9時間の休息を挟まなければいけません。ということで、ドライバーさんはそのPAで9時間休息することになりました。

これってひどい話ですよね?

事業所のすぐ近くまで帰ってきているのに、家に帰れないのです。

SAに止めたトラックの中で、9時間経過するまでずっと待つのです。これでは連続で仕事しているのと全然変わりません。

そして9時間経過すればまた続けて仕事ができてしまうというとても怖い話でもあります。

あとちょっとだけ運転できれば家に帰ってゆっくりできたのに、こんな融通の利かない規則って珍しいですよね。

自由に休憩できないことが長時間労働につながっている

連続運転なんて4時間こえてもしょうがないよ!とか30分休んだことにしてどんどん帰ってきなよ!と考えている事業所もある一方で、これらの規則に従って分刻みの運行を行っている事業所もあります。

どちらがいいかなんてここでは考えたくもありませんが、規則というのは、「破らせるほうも破るほうもリスクがある」ということを忘れはいけません。

だからこそ偉い方たちだけで決めるのではなく、現場の方の意見をしっかり反映したものにしないとだめだと思うんですよね~。

これに関してはもうすこしドライバーさんに休憩の判断権限などを持たせることができればいいのにな~と思います。

例えば「今日は疲れているから多めに休むわ」とか「昨日の運行は楽で今日は元気だから長めに走るよ!」なんて感じです。そうなればSAの駐車場も、あんなに半強制的休憩のトラックで混まなくなるんじゃないのかなと考えますが、いかがでしょうか。