複雑になった高齢者の免許更新
高齢ドライバーの免許更新時に「運転技能検査」が行われます。
この「運転技能検査」というのは高齢ドライバーが実際に車を運転し、それに同乗する試験官などが「合格」か「不合格」かを決めるという結構「ガチ」な実技試験です。
そして、この「運転技能検査」に「合格」できなかったら、その後の免許更新手続きはできなくなってしまうというちょっと怖い制度なのです。
もしかすると多くの高齢ドライバーが運転免許を失うことになるかもしれません。
日々高齢ドライバーが起因となる交通事故は増えていますし、世界でも類を見ない長寿大国日本の交通安全は、増加する高齢ドライバー対策が重要です。
だからこのような制度が取り入れられることになったのでしょう。
でも、実際に受ける側から見ると不安で不安でしょうがないですよね。
今回は「運転技能検査」と高齢ドライバーの免許更新についていろいろ紹介します。
内容は、この検査を受けなければならないのはどのような方か、検査の内容は、そして不合格になったらどうしたらいいのかなどです。
そしてこの運転技能検査はコツをしっかり押さえれば合格するのはそれほど難しくないかもしれないということもお知らせしたいと思います。
免許更新の流れ
まず、高齢ドライバーの免許更新の流れについて説明します。
免許更新は年齢によって手続き・流れが変わります。
70歳未満の方は、警察署や免許センターに行って、講習と同時に免許更新を行います。
70歳以上の方はまずは教習所などで行われる高齢者講習を受け、その後警察署などで免許更新を行います。
75歳以上の方はこれも教習所などで行われる認知機能検査を受け、その後高齢者講習を受け、やっと免許更新を行うことができます。
70歳未満の方の免許更新は一日、一か所に行くだけで終わるのに対し、70歳以上の方の免許更新は何回も教習所や免許センター・警察署に足を運ばなければならないのですね。
当然これらの検査や講習を受けるにはお金がかかるので、年齢が上がれば上がるほど、免許更新は大変になっていくのが現状です。
そして令和4年の法改正で追加された「運転技能検査」。
これは75歳以上で「一定の違反歴のある」方が受けなければならないもので、これに該当する方は、運転技能検査に合格し認知機能検査にも合格し、さらに高齢者講習を受けてからやっと免許更新ができるようになる!というとんでもない手間がかかる流れになっているのです。
昔は警察署に一回出向けば簡単にできた免許更新。年齢が上がったとはいえここまで複雑になると嫌になってしまう方もいるかもしれませんね。
ただ、同時に認知機能検査は3問から2問と簡略化、高齢者講習も3時間または2時間の2種類の講習から2時間講習だけに統一されるなど、多少はシンプルになるところもあるようです。
特に3時間で7950円かかる高齢者講習を受けるはずだった方は2時間の講習6450円になるので、多少は安くなっています。
でももともと5100円だった2時間講習が6450円になっているので、これを受ける多くの方にとっては実質値上げですね。運転技能検査を受けなければならない方とは?
では運転技能検査を受けなければならないのはどのような方か、そしてどのようなことをやるのかについて紹介します。
運転技能検査を受けなければならない方は次の通り
① 75歳以上の方
② 過去3年以内に一定の違反行為のある方 これの両方に該当する方です。
(更新を受けようとする年の誕生日の160日前の日前3年間)
一定の違反行為とは次のものです。
信号無視
通行区分違反
通行帯違反等
速度超過
横断等禁止違反
踏切不停止等・遮断踏切立入り
交差点右左折方法違反等
交差点安全進行義務違反等(交差点優先妨害、優先道路通行車妨害等、交差点安全進行義務違反など)
横断歩行者等妨害等
安全運転義務違反(前方不注意、安全不確認等)
携帯電話使用等
この違反をだいたい過去3年間の間にやってしまった方は、運転技能検査を受けなければなりません。
年齢よりも違反があるかどうかがとても重要ということですね。
大まかにいうと72歳を超えてから違反で捕まると、免許更新がすごく大変になってしまうのです。
運転技能検査の内容は?
つぎに運転技能検査とはどのようなものかを紹介します。
これは免許センターや教習所で行います。
実際にコースを普通車で走行してもらい、基本的な運転ができるかどうかを同乗する試験官などが確認するものです。まさに運転の試験ですね。
走行距離は1200m程度ということなので、それほど長く運転するのではありません。
この検査では、信号無視をしたり右左折後に反対車線に進入してしまうような、安全運転が期待できないほど運転技能水準が低い者は合格としないということなのです。
検査ではなにをやるのか。課題はつぎのとおり
①指示速度による走行
②一時停止
③右折左折
④信号通過
⑤段差乗り上げ
これらの課題ができなかったり、試験官にブレーキやハンドルを補助されることがあると100点から減点され、最終的に70点残っていれば合格となります。(二種は80点)
検査課題を見るとS字やクランク、車庫入れなどのいわゆる「むずかしいぜ」というものはなく、決められた速度を出すとか信号や一時停止を守るといった本当に基本的な運転内容ですね。
求められているのは上手な運転ではなく普通の運転です。だから難しい運転をしなければならない検査ではなさそうです。
といっても助手席に怖い顔した試験官がいたら絶対に緊張してしまいますね。
この検査で約3割の方が不合格になると言われています。
以外とゆるい?実際の検査
このような検査が行われたら75歳以上の違反歴のある方は、全員免許が取り上げられてしまうように思えますが、いろいろ調べていくと実はそうではなさそうな部分もあります。
特に運転技能検査は、皆さんが昔免許をとるときに受けた運転の試験とはだいぶちがうところがあるようなのです。
たとえば一時停止の課題。
止まれの標識がある場所で停止線がある場合は、そこまでに止まらなければなりません。
停止線を超えたらその後停止しても違反行為であり、運転免許試験では一発で不合格となります。
でも運転技能検査は違います。
一時停止で停止線を越えたけれど、交差道路まで入らないで止まればマイナス10点。
交差道路まで入って止まったらマイナス20点といった具合に、本来は一発不合格となるちょっと?のミスは少ない減点で済むようになっています。
他にも・・
交差点を曲がるとき、ふらふら曲がったり安全確認を忘れたりすると減点されそうですが運転技能検査は違います。脱輪(20)しないか、右左折後に反対車線にはみ出さないか(ちょっとは20、全部は40)しか見られていません。
ふらふらしても安全確認をしなくてもウインカーを出さなくても脱輪するか対向車線にはみ出さなければ何も減点されないのです。
このあたりが「普通の運転」をすればいいんだということですね。公道の交差点でドブに落ちたり曲がったあと逆走するのは確かに普通の運転ではありません。
上手な運転はしなくても大丈夫。
止まれは停止線までに止まれば減点ゼロ、赤信号を見たら止まれば減点ゼロ。
交差点では脱輪しないで対向車線にはみださなければ減点ゼロということなのです。
どうです、絶対難しい検査ではないですよね。
しかもこの検査の直前には、どのように運転したらよいかという事前説明が行われます。
たとえば「コースのここには止まれの標識があるので止まってくださいね。」とか、「この交差点を左に曲がるので脱輪させないでください。」なんて感じです。
「ここには信号がありますよ」なんてことも言われるでしょう。
あらかじめどのようなコースを走るのか、ここではちゃんと停止線までに止まって、ここでは対向車線にはみ出さないでなど、どのように走ればいいのかということをちゃんと説明してくれるということです。
これだけ教えてくれればあとはその通り運転すればいいですよね。
距離も1200mとたいして走らないので、忘れてしまうようなこともないでしょう。
ここまで聞けば運転技能検査、合格できそうな気がしてきますよね?
事前にどのように運転するか説明してくれるしちょっとのミスならわずかな減点で済む。
それでも3割が不合格になるということは、これが高齢者の特徴かもしれません。
落ち着いて説明を聞き、やることを理解して受検したいです。
この運転技能検査は不合格になっても何回でも受検できます。もちろん手数料(3550円)はかかります。
更新期間満了までに合格できないと運転免許を更新することができないので、同じコースで何度かチャレンジするのもいいと思います。
合格できないとどうなるのか?
それでもどうしても合格できない方がいるかもしれません。
でもその方の免許が100%なくなってしまうということではなく、今後どうするかいろいろ選択できるようです。
たとえば普通車を運転できる免許を返納して原付・小型特殊免許だけにすることで免許を継続することもできます。
これを機会に普通車はやめて、原付にしようという選択もできるということですね。
難しい制度なのでわかりにくい部分もあると思いますが、こまったら警察署などで相談してください。
運転技能検査は自分自身の運転を見つめなおす機会になるかもしれません。
ただ、本当に危ないと感じたら運転を止めるということも必要です。
運転を続けるのも勇気ですがやめるのも勇気です。
世の中の交通安全のために自分にできることを頑張りたいですね。