2025年10月「外免切替」制度改正 外国人の「観光しながら免許取得」はできません

最近、問題となっている「外免切替」。
外国の運転免許証を持つ人が、日本の運転免許を取得する制度です。

試験はあるのですが、その内容が「簡単すぎる」という指摘が。

特に学科試験は、「お子様」でも答えられそうな問題が、10問出題されるのみ

わずか1時間程度の勉強で、合格できると言われています。


また、免許申請に必要な住所は、滞在しているホテルのものでも可

日本に観光にきたついでに、免許をとることもできます。中国では、日本の免許をとるツアーが組まれているそうですよ。


これに対し、警察庁は制度を改正する方針を公表しました。

いったいどのような内容なのでしょうか。

外国の運転免許で日本の道路を運転する方法は?

外国の運転免許を持つ人が日本で運転する方法は、大きく分けて二つあります。


ひとつは、手続きを済ませて運転する方法です。

外国で取得した運転免許証に、領事機関などが発行する日本語の翻訳をつけることで、1年間運転をすることができます。(道交法第107条の2)。

ただし、これは日本と同じような免許制度と認められる、一部の国のみが対象です。(スイス・ドイツ・フランス・ベルギー・モナコ・台湾のみ)。

他に、「国際免許証」を取得する方法があります。

道路交通に関する条約(ジュネーブ交通条約)に加盟している国では、有効な運転免許証を所持するものに対しては、新たな試験を受けることなく、自国の道路において運転することを、認めるようになっています。

事前に申請をしておけば、外国でも運転することができるのです。

加盟国はおよそ100ありますが、そうでない国の人。

例えば、ベトナムや中国の人は、この制度を利用することはできません。

【参考】ジュネーブ条約締結国
 アイスランド、アイルランド、アメリカ合衆国、アラブ首長国連邦、アルジェリア、アルゼンチン、アルバニア、イスラエル、イタリア、インド、ウガンダ、英国、エクアドル、エジプト、エストニア共和国、オーストラリア、オーストリア、オランダ、ガーナ、カナダ、カンボジア、キプロス、キューバ、ギリシャ、キルギス、グアテマラ、クロアチア、コートジボワール、コンゴ、コンゴ民主共和国、サンマリノ、シエラレオネ、ジャマイカ、ジョージア、シリア、シンガポール、ジンバブエ、スウェーデン、スペイン、スリランカ、スロバキア、スロベニア、セネガル、セルビア、タイ、大韓民国、チェコ共和国、中央アフリカ共和国、チュニジア、チリ、デンマーク、トーゴ、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、トルコ、ナイジェリア、ナミビア、ニジェール、日本、ニュージーランド、ノルウェー、ハイチ、バチカン、パプアニューギニア、パラグアイ、バルバドス、ハンガリー、バングラデシュ、フィジー、フィリピン、フィンランド、フランス、ブルガリア、ブルキナファソ、ブルネイ、ベナン、ベネズエラ、ペルー、ベルギー、ボツワナ、ポーランド、ポルトガル、マダガスカル、マラウイ、マリ、マルタ、マレーシア、南アフリカ、モナコ、モロッコ、モンテネグロ、ヨルダン、ラオス人民共和国、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、ルーマニア、ルワンダ、レソト、レバノン、ロシア連邦
<特別行政区等>
 香港、キュラソー島、ガーンジー、マカオ、シント・マールテン、ジャージー、フランス(フランス領ポリネシア等)、アルバ、ジブラルタル、アメリカ合衆国(グアム、プエルトリコ等)、マン島、ケイマン諸島


ふたつめは、試験を受けて日本の運転免許証を取得する方法です。


これが、話題となっている「外免切替」です。

日本の免許センターで、学科と技能の確認を受け(他に適性試験など)、日本の運転免許証を取得するものです。


日本の免許証を持つと、先ほど紹介したジュネーブ条約による「国際免許」の制度を利用できるようになります。世界のおよそ100ヵ国で、運転できるようになるのですね。

ちなみに、2024年に外免切替で免許を取得した外国人は、約6万8000人。ここ10年で2.7倍に急増しています。最近は、ベトナム人と中国人が多く、その理由のひとつに国際免許があるのかもしれません。(ベトナム約1万6700人、中国約1万5000人 2024年)。

さて、この外免切替の何が問題なのでしょうか。

外免切替の問題点は「住所」と「試験」

①免許住所がホテルでも可


外免切替に必要な書類はいろいろありますが、「運転免許申請のための一時帰国(滞在)証明書」に記載する住所は「滞在するホテルのもの」でも良いことになっています。

この場合、このホテルの住所が免許証に記載されます。


これ自体はダメな制度とは思えません。本当に一時帰国して免許手続きをする場合もありますからね。

しかし、交通事故の相手がこの運転免許証を持っていたら、ちょっと嫌ですね。

今後の相談ができるのか。「逃げられてしまうかも」なんて、不安になります。

② 学科試験が簡単すぎる

外免切替の主な試験は、学科試験と技能試験です。(正式には確認です)

特例として、免除となる国もあります。

【参考】知識確認及び技能確認の免除となる外国等
アイスランド、アイルランド、アメリカ合衆国(オハイオ州、オレゴン州、コロラド州、バージニア州、ハワイ州、メリーランド州及びワシントン州に限る。)、イギリス、イタリア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、モナコ、ルクセンブルク、台湾
技能確認の免除の対象となる外国等
アメリカ合衆国(インディアナ州に限る。)


適性試験のあと、学科試験(知識確認)と技能試験(技能確認)を受けます。

この学科試験が「簡単すぎる」という指摘があります。

問題は、イラストのついた正誤式。

問題 車両は、道路の中央から左側を通行しなければならない → 〇
問題 昼間より夜間の方が見えにくいので、速度を落とす → 〇

など、かなり簡単なものです。

これが10問出され、7問以上の正解で合格となります。


合格率は90%とのこと(警察庁)。そりゃ、そうですよね。


日本の交通ルールはとても難しく、標識だけでも、覚えきれないくらいあります。

その知識確認が、僅か10問だけで済まされるというのは、おかしな話です。

また、3問間違えても合格となるので、そんな人が同じ道路を走っていることを考えれば、不安に思う人も出てくるでしょう。

一方で、技能試験はなかなか難しいようです。

試験官を横に乗せて運転するもので、合格率は30%ほどとのこと(警察庁)。

時間はおよそ10分です。

「信号」や「止まれ」の理解が必要ですし、障害物をよける場合の安全確認などが、評価されます。

といっても、坂道発進や方向変換などの課題は無く、走る距離も短い。

この普通仮免許の試験よりも、難易度は低そうです。


それでも、なかなか合格できない外国人は、教習所に行って練習をすることができます。


以前、「私の国には、こんなに狭い道は無い」と言っていた人がいました。

国によって、道路のつくりや運転の仕方は全然違います。


特に違いが大きいのが、右側通行の国。

車のハンドルの位置も、走るレーンも、すべて逆。

現在、日本で発生している外国人による交通事故は、右直と出合頭が多い、とのことです。(公益財団法人交通事故総合分析センター)。


右側通行の国では、交差点で右に曲がるとき、対向車に気をつかうことは少ないです。

また、見通しの悪い交差点では、まずは左、つぎに右を確認します。日本の右左とは、逆ですね。

人間は、意識しているときは大丈夫ですが、慌ててパニックになっているときは、つい慣れている方法をやってしまうものです。

自分の国と右左が違うことは、事故につながりそうですね。


このような外国人による運転ミスを防ぐために、必要と思われるのが日本の道路における路上試験ですが、これは行われていません。

外免切替の技能試験が行われるのは場内コース。

歩行者はいませんし、タイミングによっては対向車もいません。

このような環境で、外国人が日本の道路を安全に運転できるのかを判定することが、本当にできるのでしょうか。

2025年7月、警察庁は「外免切替」を改正する方針を公表


このようなかなり怪しい「外免切替」。

この制度は、外国で免許証を取得した日本人が、帰国後に日本の免許証に切り替えるためのものでした。

しかし、最近では日本を訪れる外国人が増え、観光客などの短期滞在者もこの制度を利用しています。(「外免切替」で日本の免許証を取得した人のうち、外国人は全体の94%にあたる6万8623人で過去最多。2024年、警察庁)。

埼玉県で起こった「小学生ひき逃げ」、三重県の「高速道路の逆走」。

運転していた中国人男性、ペルー人男性は、「外免切替」を利用していました。


特異な事故の発生や制度に対する指摘などを受け、2025年7月、警察庁は「外免切替」を改正する方針を公表しました。その内容はこちら。

  • 国籍にかかわらず、原則として「住民票の写し」(じゅうみんひょうのうつし)で申請者の住所を確認する。これによって、観光客などの短期滞在者は、免許を取得することはできなくなります。
  • 学科試験(知識確認)を10問から50問に増やす。また7割の正解率での合格から、9割以上に変更する。50問のうち、45問以上に正解しないと、合格できないことになります。これは原付免許の試験と、同じレベルですね。問題を作成するかたは大変でしょうが、あまりにも簡単な問題の量産ではなく、必要な標識やルールに関する問題も、一定数入れてほしいですね。
  • 技能試験(技能確認)の課題に、「踏切の通過」と「横断歩道の通過」を追加する。どちらも日本の道路を運転するのに必要なもの。ですが、列車の来ない場内コースの踏切や、横断歩行者のいない場内コースの横断歩道で、効果はあるのでしょうか。

どれも、現状に合わせた良いものだと思います。

外免切替をする人は大変になりますが、交通事故を防ぐために必要なことなのでしょう。

警察庁は新制度について、意見の公募を経て、10月1日の施行を目指します。

外免切替で路上試験は行われない「私たち」が気を付けることは?

路上試験が行われないのは不安ですが、それは仕方のないことなのかもしれません。

日本で路上試験を行うとき、必要となるのが「仮免許」。

ある程度の運転技量が無いと、他の交通に迷惑をかけますし、試験官の安全も保障されません。

外国の免許を持っていると言っても、場内コースをまともに走行できない人もいますからね。


ただ、今後、日本の道路を運転する外国人が増えることは確実。

人口が減少している日本には、海外の人が多く入ってくるのです。


これまで、日本で運転してきた私たちが、知らなければならないのが、外国人の運転特性。

右直と出合頭の事故が多いことから、私たちが優先の場面であっても、前に入ってくる車に遭遇することが増えることでしょう。


現在、どこの国の人が運転しているのかがわかる「マーク」などはありません。

おかしな動きをしている車を見つけたとき「慌てている外国人かも」と思う人が増えれば、交通事故を防ぐことができるかもしれませんね。