深視力検査が苦手な人は、免許更新や教習所に行く前にいろいろ「作戦」を考えると思います。
ですが、それがうまくいっていない場合があります。
私はこれまでに何度も深視力検査の現場に立ち会ってきました。
苦労されている方のお話しを聞いてみると「そんなことしていたら余計わかりにくくなってしまうのでは?」という作戦をやっていることがあります。
深視力検査が苦手な人がやってはいけない3つのこと
1 棒がしっかり見えないのにチャレンジする
棒が「歪んでいる」とか「3本じゃない」などしっかり見えないのにチャレンジするのはダメです。
当たり前ですが、まずは眼鏡屋さんなどに行って見えるように整えてください。
意外とこれをやらない人は多いです。
2 音や秒数で判断する
音で判断するというのは棒が切り返すタイミングの検査器の微妙な音の変化を聞きとるというものです。
秒数で判断するというのは「棒が三本揃うまで何秒かかる」というのを覚えておいて、そのタイミングでボタンを押すやり方です。
これらの作戦は全然役に立たないわけではありませんが、そこに注意を向けすぎて勘違いがあると「大外れ」になってしまうことがあります。
切り返しのとき音は変わりますが、微妙でわかりにくいです。また棒の動きは一定でうまくやればピッタリのタイミングでボタンを押すことができますが、開始の位置は毎回違います(前回終了したところから開始)。
深視力検査で「大外れ」は絶対ダメです。
検査員は基本的に合格してもらいたいと考えています。スッとクリアして次の手続きに進んでもらいたいのです。
毎回惜しいところでボタンを押す方に対しては「もう少し手前ですね」とか「もうちょっと奥」なんてヒントを教えてくれるかもしれません。
だいたいできているので、あとは精度をもうちょっと上げてもらって合格にしたいのです。
一方、あまりにも手前とか一番奥など全然違うところでボタンを押してしまう「大外れ」があった場合、しかも「これでよし」なんて自信を持っていそうな場合、「この人は全然できないぞ・・」と判断します。
検査員は「別の機会でも同じようにクリアできるかどうか」ということを気にします。
例えば自動車教習所の入校の時は深視力検査をクリアできたのに仮免許の適性試験では全然できないとか、本免試験でできないなんてことになったら「前の検査はちゃんとやったの?」なんて言われてしまうからです。
なので、大外れが何度もある方を合格にすることはできないのです。
音や秒数など余計なところに注意を向けて「大外れ」を招くやりかたは絶対におすすめできません。
3 検査画面だけで考える
検査器を覗いて判断するのが本来のやり方ですが、苦手な方がこれをいきなりやると棒の動きもわからないしコツも全然つかめません。
ちょっと遠回りのように思えますが、棒がどの様に動いているか、三本揃うというのはどういうことかをまずはしっかり確認することが大切です。
「目はすごく良いのに深視力検査が苦手だ!」という方がいます。とくに「初めてやる」という場合が多いですね。
なので、大外れが何度もある方そんな方に検査器内部の棒の動きを見てもらうと「ああ、そういうことね」とすぐにできるようになります。
これは「棒がどの様に動いているか、三本揃うというのはどういうことか」のイメージと目で見る検査画面が結びついたからです。
苦手な人がこのイメージを身に着けるには、実際の検査器の内部を見るのが一番です。
そしてそれを検査画面と結びつけることです。
検査器内部は近くの自動車教習所や眼鏡屋さんに行って見せてもらうのが良いと思います。どちらもお客様ですので、おそらく優しく対応してくれると思います。
ただ、新しい検査器は内部が見えない構造なので、古い検査器があるといいですね。
他に普段の運転中、遠くの標識や電柱などを見てどちらが手前にあるか、どのくらい離れているかなどを考えるのも良いかもしれません。
深視力検査は「意味なし」「なんのため?」廃止が叫ばれる理由
深視力検査について、否定的な意見が沢山出ています。
「これがあるから二種免許や大型免許の取得を諦める人が多い。」
「ドライバー不足に拍車をかけているだけ。」
「5年おきに失業する可能性があるっていうのは勘弁してほしい。」
「ライドシェアが解禁になって深視力の意味はどうなの?」
免許更新できないと大変なので、不安に思う方はたくさんいますね。
「ずっとできないでいたら担当者が咳払いして合図してくれた」
「実際の免許更新では何回もやり直しが出来る」
現場もあたふたで「意味のない検査だ」という人も。
「実際の運転での支障はほぼない」
「現在はバックモニターがついていて安全性は向上している」
など検査自体の存在に疑問を持つ声も。
これらのことから「深視力検査はもう廃止するべき・・。」と考える人もいるようです。
検査を行う根拠って何?
運転には視力がとても大切です。これは皆が納得することです。
ですが、深視力については「なぜやるの?」と考える人が多いようです。
このことについて参議院調査室に問い合わせた方がいます。
その記事には深視力検査の必要性の質問に対する回答として
道路交通法施行規則第23条により定められている・・から。
深視力は運転に必要だという二つの論文の紹介。
があったということが掲載されています。https://go2senkyo.com/seijika/178686/posts/405388
深視力は遠近感や距離感の能力を示す機能。深視力の低下は、前方車両や交差点右折時の対向車との距離感、あるいは信号のない交差点で右左折する場合の左右からの車との距離感を判断する場合に非常に重要。(高齢ドライバへの応用を考えた運転視力測定システム 中野など2006)
見る人が見れば「なるほどね~」と思うのかもしれませんが、私は未熟でそれには該当しませんでした。
この能力が大事だというのはわかります。
片眼をつぶって少し歩くだけで遠近感がとれない怖さはすぐに納得できますからね。
しかし片眼が不自由な方(視力が満たない方)は、必要な視野があってもトラックやバス・タクシーの免許を取得することができません。
ということは深視力はそれ以上の精度を求める検査ということでしょうか?
深視力検査を行う根拠は、視力検査などと比べてはっきりしないもののようです。
検査方法は正しいのか?
深視力検査器の画面は真っ白な背景と三本の黒い棒だけ。
極限まで無駄を省いたシンプルな世界で遠近感を表現しているわけで、とにかく見にくいです。
「実際の運転では使わない」とよく言われるのが、この検査画面があまりにも現実とかけ離れているからでしょうか。
正しく検査を行うためのスタイルなのだと思いますが、「これで本当に俺の深視力が判定できるの?」と疑問がわきます。
これがサバンナの背景だったらどうでしょうか。
そしてライオンとサイとどちらが遠くにいますか?というような検査だったら、受検者の反応も変わるかも。
「ライオンが手前」なんて答えたら、「オマエ運転やめた方がいいよ」と誰もが思うはずです。
もう少し現実に近い方法であれば検査方法についての疑問も減ると思うのですが・・。
深視力検査は今のところ変更ナシ
このようないくつもの疑問を持つ深視力検査ですが、先ほどの記事によると「見直しの検討について、有識者会議を開催するなどの動きはない」との回答を得たとのこと。
昭和30年代からずっと行われてきた検査。それを廃止するのはなかなか簡単ではありません。
何といっても廃止したときのリスクが怖い。
「深視力は運転に一切必要ありませんでした」というような研究が行われそれが認められなければ廃止は無いのでしょう。
ただ、今後ドライバー不足問題や自動車安全機能の進化、道路整備などによっては変わるかもしれませんね。(高速道路の法定速度のように)
ということで、私たちはもうしばらく深視力検査に立ち向かわなければならないようです。
まとめ
深視力検査が苦手な人がやるべきことをまとめます。
①棒がしっかり見えるように整えること。眼鏡屋さんで見てもらってください。
②音や秒数での判断をやめること。大外れを防ぐために目でやりましょう。
③「棒の動きのイメージづくり」。これが一番大事です。
それでは深視力検査、頑張りましょう。