ついにわかった!深視力検査が難しい理由


皆さんが、大変、苦労している深視力検査。なぜ、あんなに難しいのでしょうか。

「最近、老眼が進んで、メーターパネルが見にくい」

「暗い場所の黒いものが見えず、夜の運転が怖くなってきた・・」

という話は、よく聞きます。


ですが、

「深視力が低下して、上手に運転できなくて困っているんだよね・・」という相談は、受けたことがありません。


皆さんが抱える「深視力の悩み」というのは、ほぼ「免許更新」

「深視力検査が苦手」と感じているドライバーさんは、3人に1人くらいは、いるのではないでしょうか。


今回、ひとつの疑惑が浮かんできました。

それは「深視力って、検査だけが難しいのでは?」

というもの。


適切な深視力を持ち合わせているにもかかわらず検査の難易度が高すぎることによって、皆さん苦労しているのではないか?と、いうことです。


この記事では

  • 「深視力検査が苦手」と思っている人
  • 「免許更新が不安」という方

に安心してもらうため、必要な情報をお伝えします。

また、

深視力検査合格のためにどうすればよいのか、助けになる方法も紹介します。

実際の運転で「深視力を使う場面」とは「樹木アタック」?

まずは、深視力とは何か?について、整理します。

【深視力検査】2.5メートル先にある三本の棒を使って「遠近感や立体感を判断する目の能力」を測るもの。真ん中の棒だけが前後に移動し、左右の棒と一致したところでボタンを押します。そして3回の誤差の平均が、2センチメートル以下であれば合格となります。


簡単にいうと、2.5メートル先にあるモノが、手前にあるのか、それとも奥にあるのかが、誤差2センチメートルの世界でわかるかどうか、というものです。

運転中にこのような能力を使う場面があるのか、考えてみました。


よく、深視力は、右折するとき、対向車がどのくらいの位置にいるのかを正確に把握するために必要だ、という話を聞きますが、これは距離でいうと、数10メートルの世界のことです。

それもあるのかもしれませんが、間違ったことを言うのも良くないので、今回は、検査と同じ、運転席から2.5メートルくらいの場所に絞って、探してみました。


ひとつは大型トラック(バスも同じ)。

運転席から約2.5メートルの位置に「左ドアミラー」があります。

狭い場所では、ぶつけないよう気を付けなければなりませんし、右折や右カーブなど、ハンドルを右に回すとき、その位置に障害物があれば、目を向けて確認することが必要です。

樹木アタック


よくあるのが、木や植え込みなど。

ミラー先端が「当たるか」「当たらないか」というレベルで、かすめながら通る場面があります。

この時、まさに検査と同じ距離で「深視力」を使っていますね!

この行為を「樹木アタック」(じゅもくアタック)と呼びます。(この記事内だけの呼び方です)


もうひとつは普通車。

意外なことですが、タクシーを運転するときに必要な「普通二種免許」にも深視力が必要です。


タクシーの場合も、車の左前は、深視力が必要となりそうな位置。昔の車はボンネットが長く、「フェンダーポール」という棒がついていました。


ほかに車体後部。バック駐車で、「ギリギリ」つけるときは、深視力を使いそうです。まあ、モニターがあれば、かなり助かります。

タクシーは、難しい場面で駐車をすることもありそうですし、お客様の安全のためにも、高度な能力が必要とされてます。



ということで、

  • 大型車では樹木アタックをするとき。
  • タクシーでは「ギリギリ」のバック駐車など

で、深視力を使っていると、考えられます。


そうなると、深視力が低下したときはじめに影響が出そうなのはこれらの場面

「左ミラーを標識にぶつけた」とか「バックして壁に衝突」なんてことが、何度もあれば、注意が必要だと考えられます。

しかし、多くのドライバーさんは、実際の運転では、あまり困っていません。

樹木アタックも、「ギリギリ」のバック駐車も、問題なくこなしています。

それなのに、深視力検査になると、とても苦労している、という人は多い。

実際の運転で使う深視力と、検査で行う深視力に、違いがあるのかな?

深視力検査が難しい理由は「背景」と「視点」

深視力検査が難しいという「ふたつの理由」を紹介します。

① 背景がシンプル過ぎる


ひとつ目は背景。

何もない真っ白な世界に、三本の棒だけが見える。これが深視力検査の画面です。


これは、南極で、ペンギンがどの位置にいるのか?を確認しているようなもの。

背景がシンプル過ぎて、距離がつかみづらいのです。

しかも、私たちは「見えたものを脳で変換」しています。

「ペンギンが近づいてきている」と思えばそう見えますし、「自分が移動してペンギンに近づいている」と考えれば、そのようにも見えます。

信号待ちで、横の車が動くと、自分がバックしているような錯覚が起こるのと同じだね。


実際の運転は、自分が前進しているのか、停止しているのかは、「別の感覚」で理解できるので、ペンギンのようなことはあまり起こりません。


しかし、深視力検査のように「何もない真っ白な世界」では、間違って変換することがある。


棒が手前に来ているのに「奥に向かっている」ように見えたり、実際はゆっくり動いているのに「ものすごい速さで動いている」と感じることがあるのです。


正確な検査を行うため、このような背景になっているのでしょう。

ですが「勘違いが起こりやすい画面なのなのですね。

② 検査視点は「樹木側」から


もうひとつは視点。私たちが樹木アタックをするとき、当たり前ですが、車に乗った状態で近づいていきます。

しかし、深視力検査は逆です。

私たちは停まっていて、車がギリギリの位置に来たらボタンを押す・・ということをやっています。

つまり樹木からの視点で、深視力を測定しているということです。

どちらでも「同じことなのでは?」

いやいや、自分が動いているか、停まっているかで「わかる情報」が、全然変わってくるのです。

樹木アタックの手順として、樹木との距離を測る。その後、適切な速度で近づいていく。ということになります。このとき、はじめは、ある程度速い速度ですが、樹木に近づくにつれ、ゆっくりにすることでしょう。ハンドルを右に回して最接近するときは、歩く程度まで落ちていると思います。


なぜそんなことをするのかというと、「やりやすいから」です。

そして、なぜそんなことができるのかというと、「樹木までの距離」と「自分の速度」がわかっているからです。

つまり、車の速度と方向をコントロールしているから「深視力」を使って、樹木アタックをやることができているのです。


しかし、検査は樹木からの視点です。

私たちは立っている。そこへトラックが近づいてくる。2センチのところまでミラーが近づいたら「ボタンを押す」というものです。

立っている私たちが知りたいのは、

  • トラックは、どのくらいの距離から、どのようなコースで近づいてくるのか
  • どのくらいの速度で走ってくるのか

ということです。


この時、検査員が、

「時速10キロくらいで、右カーブを描きながら近づいてきます」

と、説明してくれればトラックの動きが、イメージできます


しかし、

「スピードは言えません。多分、あそこに停まっているトラックのうち、どれか一台が来るでしょう。」

という話であれば、かなり「やりにくく」なります


トラックがどのように近づいてくるのかが、さっぱりイメージできないからです。

この「トラックの動きを知ること」を深視力検査でいうと「棒の動き」の把握。「棒の動きのイメージ」です。

棒が「どのくらいの速度で」「どのように動いているのか」があらかじめわかっていないと、樹木側の視点にいる私たちにとって、深視力検査は、とても難しいものになるのです。


しかも、真っ白な背景。これは「勘違いが起こりやすい」環境といえます。

トラックの速度は10キロなのに、40キロに見えることがあるかも。右カーブなのに左カーブと思い込む可能性もありそう。

深視力検査で一番大事なのは「棒の動きのイメージ」をつかむこと


深視力検査を受けるとき大事なのは、「棒がどのように動いているのか」を把握すること。

「棒の動きのイメージ」です。


そして、そのあと、ピッタリ揃う位置を探していきます。

「棒の動きのイメージ」ができていないのに、いきなり、ピッタリ揃う位置を探してしまうと、あまりにも違うところで何度もボタンを押すことになり、検査合格が難しくなります。勘違いして、「棒の動きのイメージ」が正しくない場合も同じです。


深視力検査になかなか合格できない人の中には、

  • 「棒がとても速いスピードで動いている
  • 「とても短い距離を往復している」
  • 「スゴイ速さで折り返ししてくる」

と思っている人もいます。


これでは、深視力検査に合格できる視力があっても、検査のクリアは難しいでしょう。

だから「深視力は、検査だけがとても難しい」と感じるのか。

「深視力検査に合格する方法」とは?


深視力検査合格に必要な「棒の動きの正しいイメージ」は、どのようにして身につければよいのでしょうか。


いちばん簡単な方法は、何度も深視力検査をやってみるです。

とにかく、何回も何回も棒が動いている様子を見続ければ、そのイメージをつかむことができるでしょう。


他に、検査器内部の様子を見せてもらう方法があります。

古い深視力検査器の中には、内部が見える構造のものがあります。

実際に棒が前後に動くので、速度や距離、そのほか、折り返しの様子がすぐにわかります。特に「初めて検査を受ける方」への効果は絶大。「ああ、こういうことか」って、皆さん納得してくれます。

基準に適合している検査器で、一度「棒の動きの正しいイメージ」がつかめれば、他の検査器で試験を受けても大丈夫です。


この「棒の動きの正しいイメージ」を持っているのに、深視力検査に合格できないという人は、何らかの理由により「遠近感や立体感を判断する目の能力」が低下している恐れがあるので、眼科などに相談することをお勧めします。

でも・・深視力検査器が、警察署や免許センター。自動車教習所など限られた場所にしかなんだよね。

眼鏡屋さんにもありますが、お客様なので、最終的には眼鏡を買わなければなりません。


鋼のメンタルの持ち主であれば、どこでも「練習させてください」と言えそうですが・・。


そこで役に立ちそうなのが、深視力検査器内部の様子を使った「トレーニング動画」。マウス運転研究室で紹介していますので、興味のある方は、ご覧になってください。


今回は、深視力検査が難しい理由について、あれこれ考えてみました。

いろいろな意見があるかと思いますが、ずっと変更されていない検査のやり方。

今後も、大きく変わることは無さそうです。

それならば、逆に、「棒の動きの正しいイメージ」を、今、身に着けてしまえば、ずっと困ることは無さそうです。