
この記事では、運転免許を、「視力」で分類します。

いったい、何の役に立つのか。
ひとつは、免許を取るときの事前準備です。
教習所に申し込みに行ったのに「視力が足りません」なんて断られたらガッカリしますね。
みなさんがとりたいと思う免許には、どのくらいの視力が必要なのか、事前に確認してください。
もう一つは、将来の免許更新の知識として。
視力が低下して免許更新ができなくなったとき、免許の種類を減らせば、免許自体を継続させることができます。
今は視力に自信のある方も、この先、役立つ知識として、最後までご覧ください。
運転免許の視力試験の合格基準

運転免許の視力試験の合格基準は、大きく分けて3つあります。(道路交通法施行規則第23条)。

ひとつ目は、原付免許・小型特殊免許の合格基準で、原付視力と呼びましょう。
原付視力は、片眼が見えない場合、見える目の視力が0.5あり、かつ左右の視野が150度以上あれば大丈夫です。原付バイクは手軽に乗れ、近場の移動には大活躍します。なんならツーリングだってできます。

ふたつめは、普通免許、二輪免許、大型特殊免許などの合格基準で、普通車視力と呼びましょう。
普通車視力も、片眼が見えない場合、見える目の視力が0.7あり、かつ左右の視野が150度以上あれば合格することができます。

みっつめは、大型免許、中型免許、準中型免許、牽引免許、二種免許の合格基準で、大型視力と呼びましょう。
深視力も加わり、難しくなっています。この視力が必要となる免許は、トラックやトレーラー、バスやタクシーなど「働く車」ですね。大きな車体、たくさんの乗客を乗せるなど、高度な安全性が求められるので、視力の基準も厳しくなっているのでしょう。大型視力は、片眼が見えない場合は、合格することはできません。

深視力検査は、三本の棒を使った「奥行き知覚」の検査。「くせ」があって、苦手な人も多いです。
攻略法については、別の記事で紹介していますので、是非ご覧ください。
皆さんが、これからとろうと思う免許の視力は、確認できましたか?
不安な人は、教習所の前に眼鏡屋に行って、視力を測ってもらうことをお勧めします。
将来「目が悪くなったとき」免許更新でできることは?

免許更新の話です。
視力試験は、その人が持っている免許の種類のうち、いちばん難しい基準で行われます。
- 免許の種類が「大型」と「普通」の場合、基準は大型視力になります。
- 「普通自動二輪」と「原付」の場合、基準は普通車視力となります。
大型視力の免許を一つでも持っている人は、毎回の免許更新で深視力に合格しなければならないので、大変ですね。
では、将来目が悪くなって、視力試験に合格できなくなったらどうなるのか。
この場合、一部の免許を返納して、視力試験の基準を下げれば、免許を継続することができます。
「大型」と「普通」を持っている人は、大型視力に合格しなければなりません。

しかし、「大型免許」を返納し普通車視力に合格すれば、免許は残せます。この場合、普通免許が残ります。

その後、普通車視力も通らなくなった場合、「普通免許」を返納し原付視力に合格すれば、まだ免許を残すことができます。この場合、原付免許が残ります。

これが免許の「一部返納」です。
「一部返納」の手続きは、警察署や免許センターで、行うことができます。
運転免許一部返納で注意すべきこと
「一部返納」では、では、注意すべきことが二つあります。
ひとつは、一度、免許を返納すると、絶対に元に戻すことはできないこと。
大型免許を返納。その後、レーシックや白内障の手術を受けて、視力が回復したため、大型免許を戻してくれと申請しても、絶対に通りません。
再び大型免許を手にするには、新たに免許を取得するしか方法はありません。ですので、返納はしっかり考えてから行ってください。
ふたつめは、残る免許は、一部の人を除き、現行の法律のものになること。
大型免許を返納して普通免許を残した場合、普通免許で運転できるのは車両総重量3.5トン未満、最大積載量2トン未満、乗車定員10人以下の自動車だけになります。
以前は、普通免許で4トン車や2トン車を運転できたでしょ?


免許制度が大幅に改正され、現在は2トン車を運転するにも、準中型免許が必要です。
4トン車で仕事をしたいとか、2トン車で畑仕事をしたいと考えている人は、眼鏡を変えたり深視力のトレーニングなどして、何とか大型視力に合格するしか方法はありません。

2007年に中型免許が、2017年に準中型免許が新設され、免許の取得のハードルは上がっています。その影響は、免許をとる人だけでなく、返納する人にも広がっているのですね。
法改正も関係ない!最強の限定免許とは?

さて、ここで皆さん、自分の免許証を見てください。
先ほどの説明で「返納した後に残る免許は、一部の人を除き、現行の法律のものになる」と紹介しました。
ここでいう「一部の人」とは、いったいどのような人なのでしょうか。
大型免許などを返納しても、4トントラックや2トントラックを運転できる人がいます。

それは、現在持っている運転免許証の条件欄に、次のいずれかの記載のある人です。
- 「中型車は中型車(8t)に限る」
- 「準中型で運転できる準中型車は準中型車(5t)に限る」
「中型8トン限定免許」を持っているのは、中型免許が新設された2007年より前に普通免許を所持していた人。車両総重量8000㎏未満の自動車、いわゆる4トン車を運転することができます。
「準中型5トン限定免許」を持っているのは、準中型免許が新設された2017年より前に普通免許を所持していた人。車両総重量5000㎏未満の自動車、いわゆる2トン車を運転することができます。
4トン車、2トン車という呼び方は通称なので、実際に運転する場合は、車検証などで確認してください。
この条件が記載されている人は、大型視力が通らなくて一部返納した場合でも、普通車視力に合格できれば、4トン車、または2トン車を引き続き運転することができます。

それは、既得権があるため。
これまで運転できていた車が、法律が変わったことで運転できなくなったら困りますよね。
そうならないために、昔の普通免許の名前を変えて、継続させています。
この限定免許を現在でも持っている人は、普通車視力で、一定の大きさのトラックを運転することができるのです。

限定免許が無くなっている人とは?

中型8トン限定免許、準中型5トン限定免許が、無くなっている人もいます。
この限定免許は、法改正後に上位免許を取得すると消滅します。

新しく免許をとるのであれば、新しい免許制度に従ってくださいということです。
中型8トン限定免許を持っている人が、2007年以降に、マイクロバスを運転するために限定解除をしたり、もっと大きな自動車を運転するために大型免許などを取得した場合、中型8トン限定免許は無くなります。
準中型5トン限定免許では、2017年以降の準中型限定解除や中型・大型免許の取得などが当てはまります。
他に、けん引、二種免許の取得もそうですね。
ずっと昔から普通免許を持っていたのに、限定がついていないという人は、法改正後に上位の免許を取得したのでしょう。
現在限定がついている人でも、今後、上位の免許を取得すると、限定は無くなります。
上位免許を取得することは、仕事の幅が広がり給料が増えるなど、得られるものは大きいです。
しかし、大型免許をとっても実際の仕事はずっと4トン車で行うとか、事業所に2トン車しかないという人には、視力試験のハードルが上がるだけで、メリットが無い場合もあります。
あと何年くらい運転するのか、この仕事をどのくらい続ける予定なのかなど、状況に合わせて考えることがとても大切です。
まとめ
運転免許には、三種類の視力試験合格基準があります。取得にあたっては、その基準を満たすことができるのか、事前に確認することが必要です。
免許を取得した後は、該当する視力基準を維持し続けなければなりません。免許更新の前に不安を感じたら、眼鏡屋さんなどに相談することをお勧めします。
免許更新の視力試験に合格できなかった場合、一部返納することで免許を継続することができます。その場合、返納した免許は、戻すことはできず、残る免許は現行の免許制度のものになります。
以前の普通免許が名前を変えた「限定免許」を持つ人は、普通車視力で一定の大きさのトラックなどを運転することができます。しかし、限定免許は「限定解除」や「上位免許の取得」で無くなりますので、免許を追加する場合は、じっくり考えて行動してください。