
「トラックドライバーなら、誰もが経験する “あの瞬間”。
サービスエリアに入って、空きスペースを探す…そして、いざ停める。
たったこれだけの動作に、実は“心臓バクバク”の緊張があることを、一般の人はほとんど知りません。
- サービスエリアの大型車駐車枠の幅は、3.3メートルから3.5メートルほど。
- トラックの車幅は2.5メートル。
- 計算上の左右のクリアランスは、わずか40センチ。
ちょっとタイミングを間違うと、ぶつけます。
しかも真っ暗な夜や、雨の中でも、正確に入れなければならない。
さらに、駐車すればオッケーではなく、そこからトラックを出さなければなりません。
これもドキドキする瞬間で、「隣のトラックにぶつけないかな・・」っていつも心配になるのです。

最悪なのは、トイレから戻ったら、さっきまで空いていた隣のスペースに、でかいトラックが停まっているとき。
「これって出られるの?」そんな不安を抱えながら、深夜のサービスエリアでハンドルを握るのです。
ガチャ要素も強いですね。

はっきり言って、サービスエリアの大型車駐車スペースは狭いです。
駐車台数を増やすためでしょうが、かなりギリギリで造ってあります。
たまに、やたら広いスペースの場所もあるのですが、そんなところは人気で、常に埋まっています。
現場のドライバーからすると、「全体的にもうちょっと広くしてくれよ…」が本音です。
そんな狭さだからこそ、やってしまうのがサービスエリアでの“接触事故”。
とくに新人ドライバーさんに多く、停めるとき、あるいは出るとき、隣のトラックにミラーやリアバンパーを当ててしまう。
実は、これ、誰にでも起こりうることなんです。

軽い事故ですが、事業所では大目玉。
修理費、報告書、精神的ダメージ…。その一件で辞めてしまう新人さんもいます。
でも、そんなことでドライバーが減ってしまうのは、物流業界全体にとっても大きな損失ですよね。
で、実はサービスエリアでの駐車の仕方なんて、誰も教えてくれません。
教習所の指導員はそんなことは知らないし、職場の先輩が、いちいちそこまで見てくれることは少ないです。
みんなが停めている場所だから、お前も停めれるだろうって感じですね。
誰も教えてくれない。でも、現場では誰もが悩んでいる――
今回は、“トラックのサービスエリア駐車はなぜこんなに難しいのか?”
そして、ベテランドライバーが実際に使っている確実なテクニックを、すべてお話しします。
「基本的な駐車方法」と「切り返し」

まず、基本の話からいきましょう。
サービスエリアでの大型車駐車は、ほとんどが「斜め駐車」になっています。
前進で入れて、前進で出る。これが基本です。

この「斜め駐車」、実はとても理にかなっています。
- バック駐車よりも安全
- 出やすい
- 逆走を防ぐ
正直、隣にトラックがいなければ楽勝です。
ですがそれもタイミングで、夜になるとそうはいきません。
両隣にトラックがびっしり。その間に、ピタリと止める。
これは何年運転していても、ガクブルです。
隣にトラックが停まっていると、ハンドルを切るタイミングを間違えるだけで、すぐぶつかりそうになります。

ハンドルを切るタイミングのベストは、駐車スペースの外側ラインを意識すること。
内側の前輪を、その延長線上まで出してからハンドルを切る。
このタイミングが、一番スムーズに収まる、黄金ポイントです。教習所の「隘路(あいろ)」と似ていますね。
そんなこと言っても、状況で全然変わってくるので、大事なのは一発で入りそうになかったら、焦らず「切り返し」をすることです。
切り返しには、2パターンあります。

1つは、前が通れないとき。
この場合は、いったん反対にハンドルを切って、やり直します。

もう1つは、内側が通れないとき。
このときは元の位置までバックして、進入角度を修正します。
ポイントは、「焦らないこと」。
後ろに別のトラックが来ていても、無理して一発で入れようとしない。
でも、そんな鋼(はがね)のメンタル。誰もが持ち合わせているわけではありません。

なので、ハンドルを早く切るよりも、むしろ“遅め”のほうが安全。
切り返すときバックする距離が少ないので、「後ろのトラックが詰めてきてバックできなかった」ということが起こりにくくなるのです。
注意したい出庫時のオーバーハング

次に気をつけたいのが、出庫時の「オーバーハング」。
大型トラックの後部は、運転席から10メートル以上も後ろにあります。
早くハンドルを切りすぎると、後ろの部分が振り出して、隣のトラックにぶつかります。
ちなみにハンドルをいっぱいに回したとき、振り出す量は最大1mほど。
トラックの種類によって変わりますが、サービスエリアであれば、十分ぶつかる範囲です。
しっかり前方まで出てからハンドルを回していきましょう。
もし前方のスペースが狭いときは、やっぱり切り返し。無理は禁物です。

ちなみに、サービスエリアの斜め駐車は、「オーバーハング事故」を防ぐ効果もあります。
角度がある分、自然と車体が外側に抜ける。だから、多少は出やすいです。
もし選べるなら、斜め具合が激しいスペースを狙うのがオススメです。
実は、サービスエリアの駐車でいちばん大事なのは「どこに停めるか」。
つまり、駐車スペースの“選択”です。
簡単に言うと、隣にトラックがいないスペースに停める。
これを気を付けるだけで、だいぶ難易度が変わってきます。
サービスエリアの店舗に近いスペースは人気ですが、遠いスペースは、ガラガラなことが多いです。また、混雑時間になると、入口付近からどんどん埋まっていきます。空いていたらすぐに停めるドライバーさんが、多いですからね。そんなとき、出口付近まで行くと、意外と空きスペースがあります。
停めた先に、トレーラーがいる場所を避けることも有効です。どうしてもトレーラーは、枠からはみ出て停まることが多いです。その場合、前のスペースが足りなくなるので、出るときが難しくなります。
また、比較的短いダンプや、4トントラック、ローリーの隣を狙うのもありです。隣のトラックが短ければ、入れるときも出るときも楽ですからね。ですが、4トントラックが前いっぱいに詰めている場合、入れるときは楽でも、出るときは大型が隣にいるのと難易度は変わりません。
また、自分が出るまでそのトラックがいるかどうかもわかりませんので、これは本当に運ですね。
逆に自分が短い車に乗っているときは、隣のトラックのことを考えて、無理に前までに詰めないようにします。

ちょっとの工夫で、隣のトラックが出やすくなる。お互いに気を遣い合えば、事故もトラブルも減るのです。
大問題!「停める場所がない」時の対応
ここまで「技術」の話をしてきましたが、もう一つ、大きな問題があります。
それは「そもそも、停める場所がない」こと。
夕方から深夜、大都市近郊のサービスエリアは異常に混雑します。
あるサービスエリアの大型トラックの駐車枠は352台ですが、平日の夜10時から深夜1時の間、実際には385台のトラックが駐車していたというデータがあります。
完全に“満車オーバー”ですね。
というか、駐車枠を超えたトラックはどこに停めているのかという話ですが、それは通路などに停めているのでしょう。

実は、通路にうまく停めるテクニックもあります。
もちろん悪いことなのですが、他の車への影響を最小限に抑えた、停める位置というのがあります。
- 基本的に駐車済みのトラックの後方(反対側のトラックも、後ろを向いている位置)
- とても広く、駐車枠から前進で出るトラックの邪魔にならない場所。
「駐車スペースが無ければ、次のサービスエリアに行きなさい」というのが正しい意見ですが、そんなこと言っていられないのが現実です。
停められない場所でも停めなければなりません。
なぜなら、「改善基準告示」によって、休憩時間が法律で決まっているからです。
通路に停めるのはダメなこと。でも停めないと別の違反になります。

この板挟みが、今、全国のドライバーを苦しめています。
実情を知らない人たちは、「トラックはマナーが悪い」と一言で片づけてしまう。
でもいちばん困っているのは、現場のドライバーなのです。
何のための休憩か?事故を起こさないように・・

誰だって、文句を言われそうな場所に停めたくはありません。
そして、多くのドライバーが法律で決められた休憩をするために、予定を変えて手前のサービスエリアで待機したり、夜中に何か所ものパーキングに出たり入ったりして、駐車スペースを探し回っているのです。
そんなことを心配して不安で眠れなくなったり、ウロウロしているうちに集中力が切れてぶつけてしまうようでは、まったく何のための休憩の法律なのかわかりませんね。

トラックの世界で、ベテランの技術を言葉にして伝えられる人は少ないです。
だからこそ、こうした記事が少しでも力になれれば、と思っています。
