「運転席にいても駐車違反?」大阪トラック一斉取り締まりに見る駐車の意味とは

大阪市鶴見区の市道で、路上駐車をしていたトラックが駐車違反の一斉取締まりを受けました。


現場は片側三車線の広い道。左の車線に、約1キロにわたってたくさんのトラックが駐車していたとのこと。

大阪府警が取り締まりを実施し、4人のドライバーが反則金を支払うことになりました。


今回、警察が取り締まりを行った理由。いったい何だと思います?

それは近隣住民からの苦情。


「見通しが悪く危険」。「エンジンの音がうるさい」など、40件を超える苦情が寄せられたといいます。


この場所での路上駐車は、かれこれ30年も続いているとのこと。なぜトラックは、ここに駐車するのでしょうか。


その理由のほとんどは「時間調整」。

付近にある荷物の積みおろし先には、トラックを停める場所がない。

でも、約束の時間ピッタリに入場しなければならない。遅れたらダメなので、早めに到着して、このあたりで待っている、ということなのです。


さて、今回の取り締まりで特徴的なのは、ドライバーさんが運転席にいても捕まっている、ということです。

「買い物はダメだが積みおろしは大丈夫」な理屈

お店の前の道路に車を停めて買い物をする。これは、駐車が禁止されている道路ではダメです。


お店の前にトラックを停めて、積んでいた荷物をおろす。これは、駐車が禁止されている道路であっても大丈夫です。


道路に車を停める行為は同じ。

でも、買い物はダメ、荷物をおろすのは大丈夫というのは、どういうことなのでしょうか?


これは駐車禁止を示す道路標識です。日本のほとんどの道路に設置されているのではないでしょうか。


この標識のある道路では、駐車ができません。

また、この標識が無い道路であっても(駐車禁止の規制が行われていない道路であっても)、駐車する場合は、3.5mの余地をとらなければなりません。

これは大型トラックが通れるくらいの余地なので、かなり道幅の広い道路でなければ駐車できないことになります。


駐車が認められる道路なんて、日本にはほとんど無さそうです。

停車は「駐車に当たらない車の停止」


絶対に道路に車を停めてはいけないとなると、困りますね。

駐車禁止の道路でも停めて良い場合があり、これを停車と言います。


停車とは、駐車に当たらない車の停止をいいます。

  • 人の乗り降りのための停止。
  • 5分以内の荷物の積みおろしのための停止。
  • 運転者がすぐに運転できる状態での停止。

道路脇に立っている友達を、車に乗せてすぐに出発する。

運転席に乗ったままの状態で歩いている人に道を尋ねる、などの短時間の停止は、停車です。

また、店の前に車を停めて、荷物の積みおろしを短時間で済ます場合も、停車とされています。

ただし、認められているのは積みおろしだけです。

これらに該当する行為であれば、駐車禁止の道路であっても車を停めることができます。

お店の前に車を停めて買い物をするのは駐車なのでダメですが、短時間の荷物の積みおろしは停車なので良いという理屈は、わかるでしょうか。

わかりにくい駐車の基準「判断される二つのポイント」とは?

道路交通法の駐車の意味は、なかなか分かりにくい。私たちが、停車のつもりで駐車をしてしまうことはありそうですね。

駐車と判断されるポイント。それは二つあります。

ひとつは、すぐに運転できる状態かどうか。

買い物をしていて運転者が車から離れていているなど、すぐに車を動かせない場合は駐車と判断されるでしょう。

道路脇の自動販売機で買い物をするのは微妙ですが、基本的に運転席にいない場合、駐車と言われても文句はいえません。

実際の取り締まりでは、近くにいれば注意で済むかもしれませんが、すぐに運転できない状態は、駐車です。

もうひとつは、車を継続的に道路に停止させているかどうか。

客待ちをしているタクシー。お客さんは30秒後に現れるかもしれないし、5分経っても来ないかもしれません。

荷物ができるのを待っているトラック。すぐに積めるかもしれないし、1時間後になるかもしれません。

これらは継続的に停止している行為で、駐車です。

どのくらいの時間、車を停めていたのかは関係なく、停めた目的により駐車と判断されます。

まとめてみると、運転席にドライバーがいなければ「すぐに運転できない状態」なので違反。

運転席にいたとしても、目的が「継続的な停止」であれば違反。

ハザードランプを点灯させていても、エンジンをかけていても関係ありません。

今回のケースのように、運転席にいても駐車違反で捕まる可能性は、十分あるのです。

駐車禁止は、私たちが思っているよりずっと厳しい内容だったのです。

法律通りでは仕事ができないトラックの駐車問題

そうなると「駐車場以外に車を停めるところなんて無いじゃないか」という話になりますね。

しかし法律がそうなっているので仕方がない。

現在の駐車違反は、まだまだ大目(おおめ)に見てもらっているということでしょう。


トラックは駐車する場所が本当に少ないです。

トラック用の駐車場があるコンビニもありますが、街中はほぼ止める場所がありません。

ドライバーさんは買い物もできず、トイレにもいけません。

道の駅やサービスエリアなどの大型車駐車場は満車。絶対的な駐車スペースは不足しています。


そもそも、荷物を時間通り届けるために待機しているのに、それで取り締まりをうけるなんておかしな話です。

あるドライバーさんに聞いた話によると、届け先がお昼休みなので、それが終わるまで待機しなければならないとのこと。

一方で、交代で昼休みをとって、休まず荷物の受け取りをしてくれる届け先もあるとのこと。

このような対応をしてもらえば、ドライバーさんが無駄な路上駐車をする必要はなくなります。


これは、物流に関わる全ての人が関係する問題。

現状はドライバーさんだけが、大変な思いをしている状態なのです。

何か対策はないのでしょうか。

できることは迷惑をかけない駐車?

今回の取り締まりのきっかけは、通報。


迷惑駐車はダメですし、ゴミ捨てなどがあれば、近隣の方も黙っていないでしょう。

あちこちの道路で通報ばかりされるようになれば、本当に駐車できる場所が無くなってしまいます。


そこで、通報されそうな場所に車を停めるのはやめるというのは、どうでしょうか。


法律によって、駐車も停車もしてはいけないと決められている場所の一部を紹介します。

この場所で車を停めると、きっと困る人がいるでしょう。


まずは横断歩道の近く。横断歩行が見えなくなるので危険です。


次に、交差点の近く。見通しが悪くなるし、邪魔です。


先ほど駐車禁止の道路であっても、5分以内の荷物の積みおろしは大丈夫なんて言いましたが、それは近くに横断歩道や交差点などがない場合です。

お店の近くに交差点や横断歩道があれば、短時間の荷物の積みおろしであっても駐車違反です。


他にも、曲がり角の近く、踏切付近、トンネルの中に車を停めることが禁止されています。


どう考えても守ることができなそうな道路交通法。

それを盾に駐車違反一斉摘発をされる前に、通報されるような駐車は、しないようにしたいですね。