大型免許「費用・条件・視力」とりかたを指導員が解説

大型免許を取りたいという方の多くが気にするのは「いつぐらいまでにとれるかな」「いくらくらいかかるかな」ということ。

免許取得までの期間は意外と長く、また費用も思ったよりかかります。

これを劇的に短く安くする方法というのは無いのですが、あらかじめ知っておけば時間もお金も無駄なく免許取得できるコツはあります。

また多くの方が躓く壁もあるので、情報を集めておけば事前に回避できるでしょう。

私マウスはこれまで多くの交通教育に関わってきました。もちろん教習指導員資格も持っています。

その経験から、これから大型免許を取得しようと考えている方に有益な情報を提供できると考えています。

今回は自動車教習所に通って大型免許を取得する方法を流れに沿ってすべて紹介します。

また基本的に中型免許の取得も同じ内容なので、参考にしてください。

大型免許の取得条件


大型免許を取得するには二つの条件があります。

1 現に中型・準中型・普通・大型特殊のいずれかの免許を持っていること


ひとつ目は現に、中型・準中型・普通・大型特殊のいずれかの免許を持っていること。

これは中型免許も同じですが、何も免許を持っていない人は取ることができません。

まあ、全く運転をしたことがない人があのような大きな自動車を運転するのはちょっとね・・ということなのでしょう、

そのため、大型免許を取得する方は、二回目の教習所通いということになります。

2 一定の運転経験

ふたつ目は一定の運転経験があること。

先ほどの免許を取得してからどのくらい経っているかということです。

大型免許取得には3年、中型免許取得には2年の運転経験が必要です。

普通免許を取得して1年しか経っていない人は大型免許はまだとれません。


この運転経験というのは実際に運転したことがあるかどうかということではなく、免許を受けている期間のことを言います。

普通免許を取得してから一度も運転したことがなくても、3年経てば大型免許を取ることができるようになるということです。

18歳で大型特殊免許、普通免許または準中型免許を取得した場合、大型免許を取得できる年齢は21歳以上、中型免許は20歳以上ということになります。

この二つの条件は取り消しになった場合も同じです。

以前大型免許を持っていた人が何らかの原因で取り消しとなった場合、いきなり大型免許は取得できず、初めに普通免許などを取る必要があります。

だたし、運転経験は取り消し前の期間も含めて計算できますので、以前に大型免許を受けていた人は普通免許を取得した時点で条件を満たすことになります。

手続きに必要なモノ


自動車教習所で手続きを行う場合、必要なモノは免許証と料金だけです。

1 運転免許証


免許証は大型免許を取ろうとする人の情報をとるために必要。

これに必要な情報はすべて入っているので、免許証以外に書類は必要ありません。

ですが一つだけ注意することがありまして、それは免許証のICに入っている本籍情報を取り出す必要があることです。

大型免許・中型免許を取得するにはまず大型仮免許・中型仮免許を取得しなければならないので、それに記載するために必要となります。

これは都道府県によって異なるので、先に問い合わせると良いです。


免許証IC本籍を取り出すには4桁の暗証番号が必要。これがわからないと手続きができないので、わかるようにしておいてください。

忘れてしまった方は警察署または免許センターに本人が行くと、教えてくれます。

暗証番号の変更は、免許の取得または更新時にしかできません。

2 教習料金

教習料金は自動車教習所、他に受ける人によって異なります。

だいたい20万円から35万円。

なぜこんなに差があるのかというと、持っている免許証の種類によって教習時間が異なるからです。

たとえば、普通免許を持っている人の場合、最短教習時間は30時間。

一方、中型免許を持っている人は14時限です。

基本的に教習を受ける時限数が多くなればなるほど教習料金は高くなります。

自動車教習所ごとで料金を比較する場合、現在持っている免許に応じた料金で見てください。

適性テスト(視力)の準備

他に自動車教習所の手続きで行うのが適性テスト。

免許の種類に応じた適性試験に合格できる能力があるかどうかのテストです。

といっても主に視力。他に手足などの体の動きです。

大型免許、中型免許、ほかに準中型免許(牽引・二種)の適性試験の視力基準は片眼0.5以上、両眼0.8以上、他に深視力です。

眼鏡をかけてもコンタクトレンズを使っても良いのですが、その場合免許条件に「眼鏡等」がつきます。


このとき困るのが深視力検査。

もしかすると大型免許取得の一番の難関かもしれません。

三本の棒を使った奥行き知覚の検査なのですがこれに悩む人が多く、「大型免許取得で何がキツイって深視力が一番きつかった」というコメントもいただいています。

簡単にできる人もいるのですが、初めてやる方、苦手な方にとっては大きな悩みとなっています。

教習がうまくいって大型自動車を運転できるスキルが身についても、深視力検査に合格しないと免許が交付されません。

深視力検査はこの後も何度かやることになるので、攻略法などは別で紹介します。

深視力検査などがダメで入校時の適性テストに合格できない場合、眼鏡店などに行くようになると思いますので、眼鏡ができるまでは手続きは中断になります。

場内教習(第一段階)

無事入校が済んだら教習に入ります。

1 教習で使う大型車両


基本的に大型免許の教習は運転だけ。学科はありません(1時限行う場合があります)。

教習で使う自動車は長さ11mほどの大きなトラック。いわゆる本当の大型トラックです。

また現在のところAT限定はありませんので、すべてクラッチ操作のあるMT車での教習になります。


はじめの目標は仮免許を取得すること。

仮免許とは路上で運転の練習を行うときに必要な免許です。

まずは路上を走れるくらいの技量を身に付けましょうということです

第一段階の教習はすべて場内コースで行われます。

隣に指導員が乗って、アクセル・ブレーキ・クラッチなどの運転操作から細かく教えてくれます。

自動車教習所の場内コースってあまり広くないのですが、それでも大型車が通れるように交差点の角が丸くなったりしていますので、ここで車体感覚などもつかんでおきましょう。

2 坂道・路端停車・隘路などの課題


ちょっと面倒なのは課題と呼ばれるもの。坂道発進、S字クランク、隘路、路端停車などです。

これらはすべて仮免許を受けるための試験課題になっているのですが、それぞれやり方のルールが決まっています。

これに沿わないと試験が不合格になることがあるので、ルールをよく聞いておきましょう。

3 勝手にやるのはダメ?安全確認


場内教習で気をつけたいのは安全確認。

免許試験では決められた安全確認方法があり、タイミングややり方が違うと大きく減点されます(1回につき10点)。

その通りにやらないとダメなので、「これでいいでしょ」って勝手にやると点数が無くなります。

そのためにやってはいけないことがあります。

それは指導員に言われるまで、自分流の安全確認をしないということ。

もちろん優先車両が来たらゆずるなど最低限の確認はやりますよ。

ですが、安全確認は習うまで待つというふうに思っていてください


一段階の後半で「今日は安全確認の説明をしますね」と必ず言われるはずです。

それまで待つという感じです。

あまりにも勝手に「よしよし」安全確認をしていると、「この人はもう安全確認の説明を受けたのかな」なんて思われて細かい説明がされないことがあります。

あやふやなまま検定に臨んで不合格になって「教えてくれなかったじゃん」なんてトラブルになるのは嫌ですからね。

最初の試験「修了検定」

初めての試験は修了検定。これは仮免許を取るための運転の試験です。


試験を担当する検定員はおそらく初めて顔を合わす人だと思います。

教習を多く担当した指導員(検定員)はその人の検定を担当できないからです。

ですが、その自動車教習所のコースを上手に走るやり方は十分習ったはず。練習した通りにやっちゃってください。

大型免許(中型免許も含む)の修了検定の合格率は、かなり高いです。

その理由として合格点数が60点と比較的低いこと。

他に教習でほぼ同じコースを走行できるからです。

修了検定は場内コースで行うこともあり、進行妨害(優先車妨害)などのイレギュラーが比較的起こりにくいです。

自分のペースで課題をしっかりこなしていけば、合格は難しくないと思ってください。

仮免許取得のための適性試験


修了検定合格後、適性試験が行われます。

自動車教習所に入校したときにやった適性テストとほぼ同じです。

内容は視力試験と深視力試験が主なのですが、前回と違うのはテストではなく試験であること。

免許センターで行っている試験を自動車教習所が委託されて行っているという形なので、ここで不正などがあれば問題となります。

そのため同じ検査員であってもなんとなく厳しめな雰囲気になることも。

ですがこれに合格すれば仮免許の交付をうけることができますので、落ち着いてやってください。


もし合格できないと仮免許を取ることができません。

その場合、後日再受験することになります。

仮免許試験(適性試験)の受験料は一回につき1000円から2000円ほどかかりますので、何度も受けるのは大損です。

また修了検定合格証明書(運転の試験に合格しましましたという証明)の有効期間は3カ月。この間に適性試験に合格できないと、再び修了検定を受けなければならなくなります。

ここでひとつ疑問が・・。

それは「入校時の適性テストの視力で合格できたのに、仮免許試験の適性試験で合格できない人がいるの?」ということ。

一度できたものができなくなるなんてことがあるのかと不思議ですが、実は結構あります。

その原因は深視力検査。

視力はOKでも深視力検査に合格できないのです。


深視力検査ができる・できないの要因は「棒の動きのイメージ」の把握。

これをわかっている人は教習所でも警察署でも、古い検査器でも新しい検査器でもきっと合格できます。

ですがこれを掴んでいない人は少しでも条件が変わると三本の棒が揃う様子がわからなくなります。

「棒の動きのイメージっていったいなに?」と気になった方は、この記事で紹介しています。

仮免許試験には他に学科があるのですが、大型免許を取得しようとする方は既に免許を持っているので、免除となります。


仮免許の有効期間は適性試験を受けた日から6カ月。

これが切れる前に自動車教習所での卒業検定に合格しなければなりません。

路上教習(第二段階)

仮免許取得後の教習はいきなり路上。

場内と公道と全然違うのは想像できると思います。

目的がバラバラな一般車両がたくさん走っていますし、歩行者も自転車もいます。

難易度は一気に上がります。

1 公道の走りにくさを誰もが実感します


また、ここで思いっきり感じるのは日本の道路の狭さ。

幅約2.5m、長さ約11mの巨大車体が余裕で通行できるスペースは正直少ないです。

バラバラな交差点の形。ちょうどミラーがぶつかりそうな高さにある標識。

すべてが行き先を阻む障害物に見えるはずです。

また同じ道路であっても道幅がたびたび変わることに気づくのも、大型車を運転してわかるあるある。

普通車の運転とは全く違った景色に見えます。

2 気を付けたい大型車の特性「オーバーハング」

運転に慣れてきても注意したいのはオーバーハング。

これは右左折などハンドルを大きく回したときに、車体後部が隣の車線にはみ出す特性を言います。

教習で使う大型車はタイヤが10個の後部が振り出しやすい(オーバーハングが大きい)タイプ。

市街地を走る場合は特に注意が必要な車両です。

右左折できるタイミングであっても、自車の隣に大型車がいた場合などは、タイミングをずらすようなテクニックが必要。

これは免許取得後も絶対役に立つので、うまくできなくても教習中に注意を向けることはマスターしておいてください。


実際の運転では、オーバーハングの振り出しを防ぐためにあらかじめ車体を斜めにしたり、わざと大回りしてハンドルの回転量を減らすテクニックもあります。

ですが、それは免許試験ではダメ。

教習所での運転では、左折前はできるだけ左側に寄せる、そして交差点側端に沿って徐行・・というような道路交通法に従った方法が求められるからです。

他にも右折は「交差点の中心のすぐ内側を徐行」ですし、通行する車線も常に左側で右折前に改めて右の通行帯に車線変更しなければならないなんて窮屈に感じるポイントがあるでしょう。

ですがすべてその通りやらないと「減点」になるので、言われた通りやるのが良いです。

すでに大型免許を持っている先輩があれこれ運転のコツを教えてくれるかもしれませんが、それはあくまでも免許取得後の運転の話。

まずは免許試験合格のため、しばらくは無視することをお勧めします。

路上試験課題「方向変換」「縦列駐車」

路上教習の合間に、方向変換(車庫入れ)縦列駐車の教習があると思います。

この二つの課題のどちらかを卒業検定でやるのですが、実際の練習時間はとても少ないです。


中型免許や中型8t限定免許を持っている方は、おそらく第二段階のうち1時限しか練習時間がないと思います。

他に最後の「みきわめ」の時間の半分ほど。

正味70分ほどの短時間で車庫入れのすべてをマスターするなんてことは無理なので、指導員がおすすめする(公式にはおすすめしていませんが)「目印」をしっかり覚えておくことが大切です。

「このあたりに〇〇がきたらハンドルを思いっきり回す」みたいなポイントをしっかり教えて(?)もらってください。

卒業検定は路上を走行します

路上教習が終わると卒業検定になります。

1 卒業検定の流れは?


卒業検定は路上でやります。

一般車も走っているので、前回の修了検定と違って気を遣うところはとても多いと思います。

といっても走行するコースは意外と楽。

運転免許路上試験のコースは走行距離や右左折回数などが決まっており、それに当てはまるよう各自動車教習所が考えるのですが、正直かなり考えつくされています。

例えばあまりにも狭い道路は外されますし、発進・停車する場所も無理なくできるところが選ばれます。

また変形交差点の右左折もコースには入れないことが多いので、試験を受ける側にとってはありがたいですね。

自動車教習所側も検定のやり方について、文句を言われるのは嫌ですからね。

あまりにも検定開始地点まで遠い場合、当日担当する検定員が運転していくこともあります。

帰りも同様。

最後に場内コースで方向変換、または縦列駐車の課題をやります。

2 卒業検定を受けるのは何曜日が良い?

卒業検定の実施日は自動車教習所によって異なりますが、曜日によって受けやすさは多少変わります。

一般的に平日は交通量が多く、土日は少ないことがあるので、土日がおすすめでしょうか。

なんとなくお勧め受験日を職員さんに聞いてみるのもよいですね。

平日の朝に卒業検定を受けて合格し、午後から免許センターに行くことができれば、その日のうちに大型免許が交付されます。

土日に卒業検定に合格しても免許センターがやっていないことがあるので、翌日以降に行くことになります。

教習を終えたことを証明する「卒業証明書」

この検定に合格すると自動車教習所は終わり。

大型免許の教習課程を終わらせましたという「卒業証明書」をもらうことができます。

この証明書の有効期間は1年。

この間に運転免許センターに行って「免許試験」を受けます。

免許センターでの適性試験

まだ試験をやるの?と思うでしょうが、実際やるのは適性試験。

仮免許の時にやった主に視力の試験です。

これに合格すると、その日に大型免許が交付されます。


免許センターでも深視力検査をやります

教習所の検査器と違うことがあるかもしれません。

また検査員も警察官であることが多いので多少ピリッとした雰囲気なことが多いです。

ここで深視力検査に合格できないと、大型免許は交付されません。

後日受けなおしになることが多いです。


深視力検査が苦手または不安に思っている方にコツを紹介します。


深視力検査合格のコツはふたつ。

ひとつ目は視力の矯正。

適切な視力があっても乱視や両眼の視力差があると合格が難しいので、眼鏡店などに相談してください。

ふたつめは「棒の動きのイメージ」の把握。

深視力検査の棒がどのくらいの速さで動いているか、どのくらいの距離を移動しているか、どのように折り返ししているかという3つのイメージを持っていますか?ということです。


視力が良くても深視力検査に合格できない人は、棒がとんでもない速さで移動しているとかものすごく短い距離を移動しているなんていう風に思っていることが多いです。


「棒の動きのイメージ」をうまくつかむ方法があります。

大型免許などの試験に合格できる適切な視力(片眼0.5・両眼0.8)があっても、深視力検査に「合格できない人」がいます。

はじめて深視力検査をやる人は、たいていできません。

目が良いのに深視力検査ができない人は、正しい「棒の動きのイメージ」を持っていません。

みなさんに棒が動くイメージを身につけてもらう方法はないかな・・。

あるとき、良い方法が思い浮かんだのです。

その方法とは「検査器内部の様子を見てもらう」こと・・

実は、アナログ式の検査器は窓から内部の棒が動く様子を見ることができます。

なかなかできなくて困っている受検者に、その窓からしばらく覗いていただき、棒が前後に動く様子を見てもらったのです。

すると・・

「ああ、こういうことね~」って!

すごく納得された様子。

そのあとの検査はバッチリ!

いきなり20㎜以内は無理でしたが、何回かやるうちに棒が揃う位置で止めることができるようになりました。

最終的には、ほぼ100%基準範囲内におさめることができるようになったのです!

詳しくはこの記事で紹介しています。

それでは、大型免許取得頑張ってください。