令和7年4月法改正後の「マニュアル(MT)免許」に隠された危険性とは?

2025年4月から、マニュアル(MT)免許の取得方法が一部変更されました。

道路交通法施行規則等の改正が行われたことによります。

これについて、MT免許取得のハードルが上がり、MT免許取得者がさらに減る恐れがあるという話も聞かれます。

もしかすると、将来MT車自体が無くなってしまうかもしれません・・。

新マニュアル(MT)免許のとりかたで見える心配な点とは

以前は教習所に入校するときに「MT」にするか「AT」にするかを決めていました。ですが今はAT一択。選ぶことはできません。


それではMT免許を取りたい!という人はどうするのか・・というと

  • 約30時限のAT車による教習を終わらせる。これには路上教習も含まれます。
  • その後、MT車による場内教習を4時限受ける。
  • 最終的に限定の無いMT免許を受ける。


このような流れです。

MT免許を取得するまでの教習(最短教習時限)はプラス1時限(35時限)、運転試験も1回(全3回修了検定・卒業検定・限定解除試験)多くなります。と同時に教習料金も値上げですね。

この制度について、いくつか心配されている点があります。

  • MT車を使った教習がグッと減った
  • MT車での路上教習が1時限もない
  • エンジンブレーキの理解が十分されない恐れがある?

以前は34時限の教習の大半を(27~8時限ほど 教習計画によって異なります)MT車で行っていましたが、法改正後はわずか4時限。いくら何でも減りすぎな感じがしますよね。

たったそれだけの時間で「あの難しいクラッチ操作」をマスターできるのでしょうか。

また路上教習がないため、後ろの車にプレッシャーを感じてエンストしたり、緩い上り坂からの発進でドキドキするあの嫌な体験をすることなく、免許取得ができてしまうのは、なんだか心配ですね。

さらに、この制度は大型免許などにも採用されるのですが、エンジンブレーキの理解が十分されないおそれがあるとのこと。

下り坂で止まらなくなった荷物満載のトラックの姿なんて考えただけでも恐ろしいですね。

4時限で「マニュアル(MT)車」の免許をとれるのは問題ナシ?以前からあった「限定解除」

MT車の運転はちょっと難しいです。

ハンドル・シフトレバー・アクセル・ブレーキ・クラッチを全部操作しなければならない。手足含めて私たちには4本しかありませんので、絶対足りない・・。

ですので動かすタイミングなどもコツがあります。それを4時限でマスターできるわけないだろ!と思いますが、実はこの時間、それほど的外れなものではなさそうです。

なぜかというと、もともと4時限の教習でMT免許を取得できる制度があったからです。

それは限定解除。


限定解除とは免許についている運転の条件を解除するもの。

すでにAT限定普通免許を持っている方が「AT車に限る」という条件を解除するには、教習所で最短4時限の教習を受けその後試験に合格する。

これで限定の無い普通免許にすることができます。

この方法は以前からずっと行われており、4時限の練習だけでMT免許を取得することはできたのです。

4時限でマニュアル(MT)車の教習が終わる理由

どうしてたった4時限でMT車の教習が終わるのか。

それはMT車の運転に必要な項目だけ教習を行うからです。


すでにAT限定普通免許を持っている人は、交通ルールはわかりますし高速道路だって走ることができます。

あとはクラッチ・ギア操作ができればMT車も運転できるだろうという理屈です。

これをAT車による教習を終えた人も同等だ!と考えているということですね。

具体的なMT車教習の内容(一部)は、

  • 発進・停止方法と変速操作
  • 坂道発進
  • S字・クランク・方向変換
  • 踏切の通行 

などです。


この中で難しいのは坂道発進。サイドブレーキで停止させた状態から半クラッチにして発進するテクニック。おそらく4時限の教習のうち2時限目にやることになるでしょう。

S字やクランクをやるのは断続クラッチ操作のため。MT車で低速走行するには、この技術が必要です。

他に「踏切内ではエンスト防止のため変速操作をしない」ということから踏切の通行もあります。口で言えばわかりそうな話ですが、これも練習して試験を行うのです。

この内容だけならば4時限で終わらせることもできそうですね。

MT車による教習は、約30時限のAT車の教習をすべて終わらせたあとに受けます。

同じ教習所で受けるのであれば、さんざん練習してきたコースなので場内のルールも十分わかっているし、安全確認もしっかり覚えている。

むしろしばらく教習所に通っていなかった人と比べ、楽にMT車の教習を終わらせることができるのではないでしょうか。


たった4時限でMT車の教習を終わらせるというのは、それほど無理な話ではなさそうです。

たった4時限の教習で試験に合格できるのか?

MT車教習が4時限で終わる!という理屈はなんとなくわかりましたが、問題は試験。

運転の技能試験というと昔から厳しいイメージがありますよね。

さすがにこんな短い練習時間ではみんな何回も不合格になるんでしょ?と思いますが、そのあたりも心配なく。実はかなりの確率で合格できると思います。


それはMT車の試験内容が「思ったより簡単」だからです。

一番のポイントは場内試験であること。

一般車も歩行者もいない。走っているのは同じようなペースの教習車だけなので、自分の運転にぐっと集中できます。


MT車の試験が場内で行われるのは、路上の運転についてはAT車による試験で判定し、MT車を運転するために必要な部分だけ場内で見るという仕組みだからです。

気になるMT車の試験の主な課題は、坂道発進、S字クランク方向変換、踏切の通行など。

これはすべて4時限の教習中に練習していますので、「みきわめ判定」に合格していれば、おそらく大丈夫でしょう。


他にMT車の運転で必要とされる変速操作。これも正直難しいことは求められません。

課題の一つに「指示速度による走行」というものがあります。

交通の流れに合わせた加速ができるかを見るために、決められた箇所で指定速度を出す(試験中に再指示されます)というものです。


速度はコース規模によって違いますが30キロから40キロくらいでしょう。

場所はたいてい教習所コースのいちばん長いストレートです。


ところでこの課題の評価ポイントは「指示速度まで加速できるかどうか」(おおむねマイナス5キロなら減点なし)だけ。ギアの指定などはありません

つまり何速であっても目的の速度を出すことができればそれでOKなのです。

ということはローで発進して2速で40キロ出せばそれで充分。

無理に3速や4速に上げる必要はありません。

ちなみに場内試験でスピードを出すのはほぼここだけ。

他は右左折ばかりで加速できるところはほとんどありません。

場合によっては2速までで試験を終えることもできるでしょう(教官の指導に従ってくださいね)。


正直なところ発進と基本的な変速ができればそれでOK。

あとは信号や止まれで停止後にギアをローに入れ忘れなければ大丈夫でしょう。


この試験で求められる変速操作技術はそれほど高くないことがわかります。

4時限の教習でこの試験に合格するのは決して難しいことではないのです。

ここまでをまとめてみます。

①わずか4時限の教習でMT車を運転できるようになるのか・・➤可能。MT車の運転に特化した教習だけが行われるからです。

②その程度の練習で試験に合格できるのか・・➤合格できる。場内コースで超基本的なMT車による走行ができれば良い。

この制度でマニュアル(MT)免許を取得した人が注意すべきこと

以前の制度と比べてMT車による教習時限はグッと減りました。

そしてMT車で路上を走行することなく免許を取得できます。

試験をクリアしたとしても、もしかすると一度も4速や5速に入れたことがない状態で公道に出なければならないかもしれません。


MT車の運転が難しいとは言ってもそこは自動車メーカーがしっかり考えて作った機械。基本的な操作ができれば大丈夫でしょう。

1週間も続けて乗っていれば慣れると思います。

免許を取得した後、実際に公道を走るときに注意が必要なもの。

それはエンジンブレーキ。

4時限しかも場内だけというMT車教習では、ちょっと理解が難しい項目であります。

実は以前から、教習所ではエンジンブレーキについて私たちが想像するような教習があまり行われていません。

それは一般的に言うエンジンブレーキと、教習所の試験で重視するエンジンブレーキがちょっとだけ違うからです。

一般的にいうエンジンブレーキとはシフトダウンを伴うもの。例えば5速で走っていたところ下り坂になったので3速に落とすみたいなものです。これはMT車を運転するうえで、絶対に必要な知識であり技術です(教習所が否定しているという意味ではありません)。

教習所で重視するエンジンブレーキとは惰力走行をしないこと。とにかく走行中はできるだけクラッチを切らないです。停止の手順は①フットブレーキを使い十分減速②その後クラッチを切る・・です。速度が出ているうちに(フットブレーキを使わず)あまりにも早くクラッチを切って惰力走行すると、地味な減点となります。走行中に不必要な惰力走行をすると、これも地味な減点となります。

どちらもとても正しいこと。

ですが、教習所では「クラッチの早切り」による減点をおそれるあまり、シフトダウンによるエンジンブレーキを積極的に行わせない傾向があります。

走行中にいきなりクラッチを切ってシフトダウン!はやらないのです。


以前は路上教習もMT車で行っていたので、「こういうやり方もあるよ。でも試験じゃやらないでね」みたいな感じでなんとなく体験する機会がありました。

教習所によってはわざとMT車で山道を走る項目を設定しているところもあります。

法改正前にMT免許を取った人は、マスターはしなくてもシフトダウンを使ったエンジンブレーキについて、ある程度の理解があったのです。

ところが今はMT車の教習は場内だけ。

狭くまっ平らなコースではシフトダウンを伴うエンジンブレーキは体験のしようもありません。

そして短い教習時限で合格してもらわければならない教官たちが、試験にほとんど関係ないことまで時間をさいて教えてくれるはずはないのです。

以前の制度でMT免許を取った人は、自分の車で下り坂を走るときに何となく違和感を覚え「そういえばシフトダウンするんだよな」って思ったはず。

ですが現行制度によるMT免許取得者の中には、全く何も感じない人もいるかもしれません。これは怖いですね。

こうならないために、教習所ではAT車教習中に教官いろいろ聞いておくのが良いと思います。

おそらく路上教習の後半あたりはかなり運転に余裕が出てくると思いますので、そのあたりでAT車のシフトダウン操作をやらせてもらいましょう(必ず教官に聞いてくださいね)。

教習車によっては視覚的にギアが変わったことがわかります。

シフトダウンによるエンジンブレーキの効果を体感できれば、MT車に乗ったときもやりたくなるはずです。

そして、MT車でやるときは、エンジンの回転を合わせてくださいね。