2025年7月ETC深夜割引変更で得する人・損する人とは?

2025年7月、高速道路の深夜割引の内容が変わります。


やる前から「値上げだ!」とか「一部の運送会社だけ得をする」「マイレージでは恩恵を受けられない」など、批判が続出しているこの制度。


得をするドライバー。損をするドライバー。あなたはどちらでしょうか。

これまでの深夜割引の内容と問題点


深夜割引は、2004年に夜間の交通を一般道から高速道路に転換することなどを目的としてはじまりました。


その内容は、午前0時から午前4時までに高速道路を走行するETC車は通行料金の3割引が適用されるというもの。


割引時間帯の走行だけでなくその前後の時間の走行にも適用されるため、うまいタイミングで高速道路の料金所を通過すれば、通行料金を大幅に安くすることができました。


しかし、料金をできるだけ安く抑えたいクルマが一定の時間帯に滞留するように。


特に割引が適用される直前の時間帯には、多くの車でサービスエリアなどが混雑し、止められなかった車は通路や加速車線、減速車線へ停車する始末。


料金所手前では割引待ちの車による渋滞が発生するなど、交通の危険を生じる状況となってしまったのです。


国は有識者、高速道路会社、大手運送会社関係者を集めて対策を協議。その結果、今回の割引内容の変更となったわけです。

新たな深夜割引の内容とは

新しい深夜割引は、割引適用時間を午後10時から午前5時までに拡大。割引の対象となる走行はこの時間帯に走った部分のみ、とするものです。


割引の時間はこれまでの4時間から7時間へと増え、割引率も同じ3割。


それほど悪くはないように思えないですね。


割引の対象はこの時間帯に走った部分だけ。これまでの「うまいタイミングで料金所を通過して割引を受けるという技」は使えなくなります。


具体的には、午前4時前に高速道路に乗る、または午前0時すぎまで待って高速道路から出るというやり方をしても、割引はほとんどされないということです。


これなら、サービスエリアや料金所手前で待機する車は、おそらくいなくなるでしょう。問題解決につながりそうですね。


割引時間内にスピードを出して、できるだけ遠くまで移動しようと考えたくなりますが、その対策もしっかりされています。


1時間あたりの割引が適用される上限距離があり、普通車などは105キロまで、大型車や特大車(乗合型自動車のぞく)は90キロとなっています。また走行時間が4時間を超える場合には30分の休憩時間に相当する距離がカットされます。


具体的には

頑張って120キロ出して2時間で240キロ移動しても、割引は210キロ分、5時間で600キロ移動しても472キロ分しか割引されないことになります。

トラックの場合、95キロで4時間走行し380キロ移動しても割引は360キロ分、5時間で475キロ移動しても405キロ分の割引となります。

これでは割引のためにスピードを出しても意味がありません。


実際のところ平均速度90キロというのはかなり条件が良くないと出せません。

430休憩も必要ですね。


料金所を通過する時間を調節してもダメ。スピードを出したり休まずに走ってもダメ。

新しい深夜割引は、時間内に適切な速度で休憩を取りながら走ることでしか割引をうけることができない仕組み。


多くのドライバーにとっては、割引のため「頑張りようのない制度」となっているのです。

深夜割引変更がドライバーに与える影響は?

この変更はドライバーさんにどのような影響を与えるのでしょうか。

トラックドライバーの場合


まずはトラックドライバーさんです。


パーキングエリアで長時間駐車をしたり本線料金所での渋滞をつくっていた人たち。
ここで大事なことを言います。


それはこれらの行為は、トラックドライバーさんたちが、自らやっていることではなく、運送会社がやらせていることだ。ということです。


最近の運送会社は儲かっていません。

ドライバーの労働時間の制約が厳しくなり以前と同じように走らせることができません。

また燃料代も高騰しています。高速道路の通行料をできるだけ安くしたいというのは、ある意味当たり前のことですね。

そのため「深夜割引をできるだけ使ってね」とドライバーさんに指示するわけです。


そうなると、ドライバーさんは早く帰りたいのにサービスエリアで待機したり、もう少し寝たいのに早起きして4時までに高速道路に乗るため急がなければなりません。


こんなことは、ドライバーさんだってやりたくないのです。

深夜割引が変われば、ドライバーさんたちは「割引のための頑張りよう」が無くなります。

サービスエリアでの無駄な時間潰しや、割引待ちのための時間調節は必要ありません。

高速道路の問題も解決するし、労働環境も改善されるのでは?というのが偉い人たちの考えです。


しかし、問題の根本は運送会社の収益。今回の変更で深夜割引を利用できなくなれば、運送会社は別の方法を考えることになるでしょう。


例えば、深夜割引が適用される時間帯への運行シフト。朝までに荷物を届けるため、これまで午前3時に出発していたトラックを、もっと早い時間に出発させるのです。

午前1時に出れば、深夜割引が終わる前に目的地近くのサービスエリアに到着できるでしょう。ドライバーさんはそこで待機。

時間になったら「荷卸し先」に向かうのです。


他に、割引のない時間帯は「高速道路を使わない」という方法も。

燃費は悪くなり時間もかかりますが、一般道路を利用するというものです。


もう、お気づきかと思いますが、これではドライバーさんの労働時間が、さらに長くなりますよね。


高速道路の深夜割引が受けられない運送会社は、収益確保のために運行計画を変更。


深夜のサービスエリアの混雑は減るかもしれませんが、別の時間帯、別の場所に混雑が移るだけ。


運送会社がとる対策の多くは、ドライバーさんの負担になりそうです。


これでは批判の声が上がるのは、当然と言えそうですね。


深夜割引の変更で得をするのは、午後10時から午前5時の間に高速道路を利用する車。物流業界でいえば、夕方に荷物をまとめて出発し、翌朝到着する路線便だけなのではないでしょうか。


他の多くの運送会社は深夜割引の変更で損をします。

そして何らかの対策をとらなければならず、これがドライバーさんに悪く影響しないことを願います。

一般ドライバーの場合

深夜割引の変更は、一般のドライバーさんにも影響します。

それは、割引の還元が、現金でなくなるからです。


これまでは、割引額がそのまま通行料金から差し引かれていました。

2000円の割引があった場合、高速道路の出口で割引された金額が表示され、「その分で、おいしいご飯を食べようか」と使うことができたのです。


しかし今後は、割引分はETCマイレージサービスまたは、ETCコーポレートカードの還元額として後日加算。


この還元されたポイントは高速道路の通行料金でしか使うことができず、「おいしいご飯を食べる」ことはできません。


そしてポイントには有効期限があり、それを過ぎると失効します。


定期的に一定の地域を訪れる人は得するかもしれませんが、年に数回の旅行で高速道路を使うという多くの方にとっては、損ですね。

というより、高速道路深夜割引は無くなる!と言ったほうが正確かもしれません。

まとめと対策


今回の高速道路深夜割引の変更で、得をするドライバーと損をするドライバーをまとめてみます。


まずは得をするドライバー。


今のところ考える限り、大手物流会社の定期便だけですね。

今回設定された深夜割引の時間帯にしっかり走ることができ、マイレージサービスを受けることができるからです。


といっても得をするのはドライバーさんではなく運送会社。

更に細かいことを言えば、割引の上限があるので、多少は値上げとなっています。


しかし、サービスエリアでの長時間駐車など社会問題解決に貢献したと胸を張って言えるので、お得なのでしょう。


もし、それ以外の方でも、同じような高速道路の走行を定期的に行えるという場合は、お得だと言えます。

それでは損をするドライバーとは。


それは割引適用時間に運転することができず、また、定期的に同じ高速道路を利用しない方。


これには多くの運送会社に所属しているドライバーさんや、たまに旅行に出かけるドライバーさんなど、大半の方が当てはまるのだと思います。


そして運送会社のドライバーさんは、割引適用のために勤務時間の変更や一般道走行が強いられるかもしれません。しいられるかもしれません。


つまり今回の深夜料金の改定で得するのは条件が合う一部の方だけ。

多くの方にとっては損となる、ありがたくない話と言えます。

今回の深夜割引の見直しは、5年程度の「激変緩和措置」が導入されます。

  • 深夜割引適用対象の車のうち1000キロ以上走行した車には、1000キロを超える部分が深夜割引の対象となります。
  • 午後10時を過ぎて料金所から出た車は、午後10時台に走行した分の通行料金が2割引きとなります。
  • 400キロを超えて走行すると高速料金が割引される制度が、拡充されます。

当面はこの緩和措置を利用しつつ、より良い方法を考えることになるのでしょう。

ちなみに深夜割引の変更は、2025年3月末に開始ということでしたが、7月に延期されています。

「システム整備に時間を要している」とのことです。

2024年にドライバーの労働時間を規制し、その1年後に高速道路深夜料金の大幅変更。

働けなくしてから料金値上げという、まるで小さな運送会社をつぶそうとしているかのような流れ。

実は一番悩んでいるのは、運送会社なのかもしれません。