
「また、赤信号か。なんでこんなに長えんだよ…。」

私もよくハンドルを握りますが・・、
急いでいる時の赤信号ほど、理不尽に感じるものはありませんよね。
しかし、実はこの「長い」と感じる信号には、交通工学的な「明確な理由」と、人間の脳が引き起こす「心理的なマジック」が隠されていることを、ご存じでしょうか。
今日は、ただの精神論ではなく、科学とロジックに基づいた「賢い信号の抜け方」をお伝えします。
これを知れば、明日からの運転が劇的に楽になるはずです。
赤信号では「なぜあんなに待たされるのか?」~交通工学の視点から~

サイクル長
信号機には「青・黄・赤」が一巡する「サイクル長(サイクルレングス)」という概念があります。
これは、1つの信号サイクルに含まれる、すべての現示(青、黄、赤、および全赤時間など)の合計時間。
交差点における車両や歩行者の流れを効率的に整理し、安全を確保するために設定されており、サイクル長は、交差点の大きさ、交通量(車や歩行者の数)、道路の構造などを考慮して決められます。
信号機によって異なりますが、一般的には1分から3分の間で運用されていることが多いです。

交通量が多い大きな交差点ほど、一度に多くの車をさばく必要があるため、このサイクル長を長く設定します。
交通量が多い大きな交差点ほど、一度に多くの車をさばく必要があるため、このサイクル長を長く設定します。
つまり、主要な道路であればあるほど、一度赤に捕まると、その待ち時間は物理的に長くなるよう設計されているのです。
「歩行者の安全確保」
「押しボタン式信号機」をじっくり観察するとわかるのですが、赤信号の時間は、「歩行者が安全に渡りきれる時間」を基準に決められています。
一般的に歩行者の速度は「秒速1メートル」で計算されます。
道幅が広い道路であれば、お年寄りや子供が渡りきるのに長い時間が必要です。
その間、交差する側の車はずっと赤信号で待機することになります。
「全赤(ぜんあか)時間」
日本の信号機には、交差点内の事故を防ぐため、全方向が一瞬だけ同時に赤になる時間が2〜3秒設けられています。
これは交差点内に取り残された右折車が進行できるようにしたり、一度、交差点内をクリアにするための重要な「安全マージン」です。

「誰も通っていないのに赤だ」と感じる不思議なあの瞬間ですが、実は交差点事故を防ぐための、とても重要な時間なのです。
赤信号は「なぜあんなに長く感じるのか?」~心理学の視点から~

赤信号が長い、物理的な理由は分かりました。
ですが、実際の秒数以上に「永遠に感じる」のはなぜでしょうか?ここからは心理学の出番です。
注意の集中
人間は、時間を気にすれば気にするほど、その時間を長く感じてしまう生き物です。
赤信号で止まると、運転という作業が中断されると同時に、意識が「早く青にならないか」という一点に集中します。
「まだか、まだか」と待つその意識こそが、時間を引き延ばしている犯人なのです。
情報の欠乏
走行中は脳が多くの情報を処理していますが、信号待ちは「とても退屈」ですよね。
脳にとって情報量が少ない時間は、体感的に長く、苦痛に感じられます。
退屈な会議を長く感じるのと同じ原理が、交差点でも起きているのです。
効率的に信号を抜ける「3つのテクニック」
仕組みと心理が分かったところで、ここからが本番です。
「渋滞学」の知恵を借りて、最も効率的に信号を抜けるテクニックを3つ紹介します。
信号の『魔法の速度』を見つける

1つ目は、「信号の『魔法の速度』を見つける」ことです。
主要な道路の信号は、バラバラに動いているわけではありません。
「系統制御」といって、ある一定の速度で走れば、次々と青信号を通過できるように連動しています。
そして多くの場合、その制御は、道路の制限速度付近に設定されています。

「前の車が遅いな」と感じて追い越しをしても、たいていその先の赤信号に引っかかって追いつかれることがよくあります。
これは外れた速度で走行しているからです。
そんなときは、視点をちょっと遠くに置いて「道路全体の流れを見る」。
遠くの信号が赤だった場合、青になるタイミングで交差点に到達するように速度を調整する。
そうすることで赤信号に引っかからない「魔法の速度」を見つけることができます。
赤信号において「急がば回れ」は、実に正しいことだったのですね。
スローイン

2つ目は、信号での完全停止を避ける「スローイン」。
渋滞学において、最も避けるべき行為として挙げられるのは「タイヤの回転を完全に止めること」です。
車は一度完全に停止してしまうと、再発進に大きなエネルギーを必要とし、また大きな時間ロスが生まれます。
遠くの信号が赤だと分かったら、早めにアクセルを離す。
じわじわと近づいている間に信号が青に変われば、スピードを殺さずに、そのままスムーズに通過できます。
これを「無停止走行」と言います。
なんだかノロノロ運転のようで、他の車より遅くなるのではと思うのですが、実はこの方法が一番速いんです。
といっても、実際にやってみると、とても難しいです。
アクセルの踏み方と離し方、ブレーキの加減など、実に巧妙に行わなければならず、併せて先の信号機に対する正確な読みをおこなうことが必要となります。
上手くできなければただの「ノロノロ運転」になってしまいますからね。

その道路の状況をよく知っている人や、運転経験豊富なドライバーさんに、是非やっていただきたい方法です。
車間距離をクッションにする

3つ目は、「車間距離をクッションにする」こと。
車間距離を詰めすぎると、前の車のちょっとしたブレーキに反応して、自分もブレーキを踏まざるを得なくなります。
前の車のブレーキにもいろいろあって、明らかに無駄と思えるものもよく見ます。
スマホを見ているのか、急に遅くなったり、分岐の手前でどちらに行ったらよいか迷って踏んでいるブレーキなど、よく遭遇しますね。人にはいろいろな都合があるので、仕方のないことなのですが、そんなブレーキにつきあっていたら、定速走行をすることができません。
十分な車間距離は、速度変化を吸収する「クッション」の役割を果たします。
前の車の意味の分からない減速が起こっても、そんなことはどうでもよくなる位のゆとりを持って走ることで、ストレスを感じにくくなりますし、安全も確保できます。

ゆとりのある車間距離を保つことは、結果的に「青の波」に乗りやすくなるのです。
それでも「赤信号」・・。ストレスを消す心のコントロール術

それでも、どうしても赤信号に捕まることはあります。
そんな時のために、ストレスを消す「心のコントロール術」も紹介しておきましょう。
まず、「赤信号を『ミニ休憩』と再定義」してみましょう。
赤信号は「運転の中断」ではなく、忙しい現代人に与えられた「強制的な休憩時間」です。
車を停止させたら、そこからしばらくは、あなたはリラックスしてオッケーです。
とりあえず意識的に深呼吸を一つやりましょう。ハンドルを握る手の力を抜き、肩をスッと落とす。
この数十秒のリセットが、到着後のパフォーマンスを上げることです。
「注意を『信号の外部』にそらす」こともやってみてください。
赤信号をじっと見つめてイライラしていても、青になる時間は1秒も早まりません。
ラジオに耳を傾けたり、明日の段取りを考えたり、「待つ」こと以外に意識を向けるだけで、時間の経過は驚くほど早く感じられます。
意外と効くのが「上着を脱ぐ」とか「ETCカードを抜いて財布にしまう」などの「ちょっとした作業」。
夢中になってしまうことのない、数秒で終わる簡単な作業をすることで、赤信号の待ち時間の長さが、大きく変わって感じられます。
「急ぐことから自分を解放する」のはどうですか?
「あと数分早く着きたい」という焦りが、イライラの最大の原因です。
そしてその焦りの基には、「約束の時間に遅れてはならない」というあなたのキッチリしたところとか、「早く帰って子供と遊んでやりたい」などという優しさがあるのでしょう。
ですが、取引先からの評価や、家族のあなたへの信頼は、交通安全とは一切関係ありません。

赤信号の長さは、安全のために必要なこと。そして「定速走行」と「心のゆとり」が、実は最も早く、快適に目的地に着くための近道です。
